何気なく100のお題
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061 仕草(軍人主・会話のみ)
「どんなのが恐いか、ですか?」
「そうそう! 中佐ってば虫も雷もグロイのも大佐も平気でしょ? 弱点はないのかな~? って思いまして」
(……別に大佐が苦手ではない訳ではないのですが)
「ティアはかわいいものでしょ? ルークは……まあ、いろいろ。ガイは女。ナタリアは…料理。大佐は……論外でしょ?」
「おやおや酷いですねぇ」
「まあ確かにジェイドは論外だよな」
「だから中佐は?」
「……料理も苦手ですよ?」
「でもラシュディの飯、俺は好きだぜ?」
「ありがとうございます。……それ以外ですと…」
「ラシュディ、大佐の眼鏡がどうかしまして?」
「……いえ、大佐が笑顔で眼鏡を直すときはろくなことを頼まれないので…」
「おやぁ? そうでしたか?」
「わかっていてあえてそう尋ね返す時も、です」
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062 独占欲(教団主・被験者イオン)
小さな手を握っても彼にはもう握り返す力がなかった。
そのことが現実をアディシェスに突き付ける。
預言に記された日は刻一刻と迫っている。
逃れ様のない『運命』と『必然』
足音を立てて忍び寄る黒い闇はアディシェス諸共彼を飲み込まんとしていた。
「……――」
弱々しく小さな声はきちんと届き、アディシェスは力強く手を握り返した。
「何、イオン」
だが、こんな時でも彼は不適な笑みを浮かべる。たとえ、痩せた頬に正規を宿していなくとも彼は彼であった。
「…約束、おぼえてるか?」
約束。
アディシェスが彼と交わした約束は少ない。
対等にいる。敬語禁止。呼び捨て上等。預言に頼るな。アリエッタの独占禁止。
……死後は導士守護役を降りる。
レプリカを『イオン』と、……彼の名前で呼ばない。
「全部。全部、覚えてるに決まってるでしょ」
「……なら、いい…んだ」
約束、破るなよ。
それだけ告げると彼の意識は暗転した。
握った手の指を絡ませて額に押し当てる。それはまだ、少しだけ温かかった。
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063 八つ当たり(傍系主・ガイ)
彼は途端に回れ右をして帰りたくなった。帰るといっても逃げることができるわけではないのだが。
「ガ~イ~」
彼の行く先には満面の笑みを浮かべたルニアが立っていた。
初対面の者ならば微笑みを返す場面であるが、ガイは彼女と付き合いが長かった。
それはもう、そこらの人間等目でないほど。
それ故察してしまった。
ルニアに嫌な事があったらしい。
それもそうとう。
「なーんで逃げるの?」
「いや、その……。用事を思い出してさ。ハハハ」
キラリと色違いの双眸が光った。
ガイは既に蟻地獄の罠に嵌まってしまったらしい。
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064 ひれ伏す(軍人主・ピオニー)
つい先日までは、部屋の主は別にいた。
だが、今日からはここが彼の部屋になる。
そこはとても殺風景で、とても面白みがなかった。
今日からは、彼の好きにしていいのだ。
酷く孤独な部屋は無音で、耳鳴りがした。知らない間に壁に溶け込みそうになっていた。
「殿……、陛下」
白い髪の上に黒いインクを垂らしたようにその声は部屋に響いた。
振り返ると、出逢った頃から大切に、大切に育ててきた"妹分"
窓から差し込む光に彼女の銀糸が鈍く光る様子をピオニーはどこか遠くで見ていた。
略式ではない、まるで中世の騎士が主人に忠誠を誓うように膝を折り、剣を立て頭を垂れていた。
銀色は見えても青い海は見えない。
そのことを彼を苛立たせた。
「我が君主、ピオニー陛下に忠誠を」
「……」
塵一つ舞わぬ部屋は沈黙を守っていた。
ラシュディの髪が零れ落ちる音が聞こえた気がした。
「我が身を護り、御身をお護り致します」
献身的なような違う誓い立てに彼は泣きそうな顔をして笑った。
「……許す」
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065 重大発表(傍系主・ガイ)
「俺の本当の名前は……ガイラルディア・ガラン・ガルディオス」
「……ガルディオス伯爵家の長男、ね」
だが、俺の予想通りルニアはただ苦く笑っただけであった。
「なに。怒ると思った?」
「いや、君は俺の思った通りの反応だよ。ルーニャ」
そういうとルーニャは泣きそうな顔をした。
互いに秘密を持っていた訳ではないから、フェアではない。
だが、俺はルーニャの次の言葉は予想していなかった。
「………知ってた、よ」
「……なんだと」
「さすがに家名までは…。でもあそこまでファブレ公爵邸を睨んでいれば嫌でもわかる。マルクトの貴族だってことは」
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久しぶりのお題です。クリアまでもう少しー!
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