デフォルト:理墺耀
高らかに歌いあげて、そして。
白い鍵盤に指を落とせば、水面に波紋が広がるように室内にじんわりと音が響く。
そっと目を閉じれば、身に沁み入るようなピアノの音。耀はこの瞬間が幼い頃から好きだった。
「耀先輩!」
扉が勢いよく開き、ここ数日で耳になじんだ声が聞こえた。
アップライトのピアノと向かい合っていた耀は細長のいすの上で体を反転すると声の主に振り返った。
「香穂ちゃん、遅刻ー。5点減点ね」
「ええっ!? 減点? って何からですか!!」
「秘密」
あたふたと慌てる彼女が可愛くて、笑いが止まらない。
からかわれていると分かるその仕草に香穂子は拗ねたように耀をジト目で見た。
「先輩~」
「ごめんごめん。で、相談したいことって?」
「そうなんです! 聞いて下さいよ!」
愚痴りモードになった香穂を椅子に座らせると、耀は続きを促した。
日野香穂子と理墺耀は旧知の仲ではない。最近も最近。ほんの数週間前にあったばかりの間柄である。
そんな2人が打ち解けあっている要因は、この学校に巣くう……存在している音楽の精ファータと名乗るリリであった。
学内コンクールのメンバーにヴァイオリン初心者ながらに無理矢理組み込まれた香穂子と帰り道偶然リリに遭遇したものの口先で丸め込み辞退した耀が出会ったのはもちろん招集がかけられたときである。
辞退したのだから残るメンバーのサポートをと言われ、耀は主に同じ普通科の香穂子のサポートに回っていたのである。
現状ではサポートというよりも、まだ音楽ができない、『音を楽しむ』ことができない香穂子の愚痴相手ではあったが、耀は少ない時間を削って彼女につきあっていたのは、どんな形であれ同じ音楽と向き合っている後輩のためである。
(不思議な言葉でいくつかのお題2)
マンガとアニメしか知らなくて手持ちはないために何も思いつかないため滅茶苦茶ですが、香穂ちゃんが好きです。
とりあえず試し書き
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