デフォルト名:天河華織
見える。という現実から目を背けるのではなく、向き合おうと思うんだ。
二カ所の異世界に赴き、そこで四神の神子という不思議な体験をした高校二年の冬。
そのときから約半年が過ぎ、華織は本格的に祓いというものを学びはじめ、そして受験生になった。
少しずつ簡単なものは祓えるようになってきたそんな日。
「旧校舎のお払い?」
そんなものは、うちの管轄ではないだろうと話を持ってきた祖父を見ると、楽しそうな笑みとは裏腹に皺に囲まれた瞳は真剣な光を宿していた。
お門違いだと諭したが、その学校の校長と知り合いだという祖父は断りきれなかったらしい。
特に危険はなさそうだから、祓う真似だけしてこいとのこと。
華織に仕事を任し、なおかつ適当にこなせというならば、特に重要ではないらしい。
加えて、あちこちの霊能者やそういう機関に調査を依頼しているらしく、華織に勉強してきなさいと言外に言っていた。
そんなこんなで、授業を家の用事で休むという貴重な体験をする羽目になった華織は、至って普通な高校に来ていた。
軽く視線を散らす限り、どこにでもいる“彼ら”以外には物珍しいものはいない。
祓ってほしいという旧校舎へと足を向けると、ハイエースが一台横付けされていた。
興味本位でのぞくと稀に見ることはない高価そうな機材がたくさん積んであった。
「何かご用でしょうか」
不意にかけられた声に、ゆっくりと振り向く。
黒い衣服に身を包み、剣呑な目つきを隠そうともしない少年が一人立っていた。
年は弟と同じくらいだろうか。
「いえ、珍しい機材がたくさんあると思ったので。……中に運ぶんですか?」
「…失礼ですが、あなたは?」
胡乱なものを見るかのように細められた色素の薄い双眸が華織を射抜いた。けれど、そんなことは些細なことと言わんばかりに目で微笑むと相手をいなしてみせた。
「私は天河華織。実家に依頼がきたので私が旧校舎のお払いにきました。お名前をお聞きしても?」
「…同じく調査を依頼されました、渋谷サイキックリサーチの渋谷一也といいます。同業者の方でしたか」
厳密に言わなくても違う。と華織は笑って言った。
「私はまだ修行を始めたばかりの身なので。今日は下見のつもりですし、お手伝いできることがありましたら手伝いますが」
「……では機材を中に運び込むのを手伝っていただいてもよろしいでしょうか」
にこりともせずに言った少年、渋谷一也に頷くと自分でも持てそうな機材を手に持ち、彼の後を追いかけた。
運び込んだ部屋ではセーラー服に身を包み、せっせと棚を作る少女がいた。
渋谷一也と現れた華織に驚きの声を上げるも、自己紹介をすると慌ててされ返された。
「谷山麻衣っていいます!」
「谷山さんね。私は天河華織。高校三年生です」
「ええ?! 大学生だと思いました…。あ、私は1年生です」
「タメ口でいいですよ?」
重量のものを粗方運び終わると機材の組立はわからないため渋谷氏に任せると華織と麻衣は機材を運び込む役に徹していた。
「うーん、じゃあ華織さんって呼ばせてもらうね!」
「じゃあ、私は麻衣ちゃん、かな?」
照れたながら笑う麻衣は、何故か暖かな空気を纏っていて、側にいるとほっとした。こんな子がいるんだなぁと頭の隅で思いながら、初対面にも関わらず会話が弾む麻衣とのおしゃべりに徹し、機材を運び終えた。
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遙か3短編主でゴーストハント。
唯一の難点は時間軸が二作ともずれすぎな点。携帯も普及してないし、カセットレコーダーとか、バッテリーが2時間しか持たないとか……。その辺は二次元ということで丸無視です。
名前は天河華織(あまかわ かおり)。
望美の幼なじみで両親は亡く、神社の神主をしている祖父母宅にて、2つ下の弟(名前は要:かなめ)と祖父母と暮らしている。昔から、霊とかそういう類がふつうに見える見鬼の才の持ち主。
望美が京に呼ばれた際に巻き添えをくうが、白龍と気が似ているようで反発する気の持ち主のために遙か1の時代へとばされ、そこで四神の神子という立場に収まる。あかねとともに京を救うと、望美の元にと願うが、望美が現れる数年前の京に飛ばされる。一度は望美とともに時空跳躍をするが紆余曲折の後に大団円で、現代へ戻り迷宮を消すと、今まで目を背けていた『見える自分』と向き合うために、祖父に浄化の仕方を習い始める。
今は『見える』時と『見えない』時を使い分ける修行とともに、身の守り方を修行している。
[1回]
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