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小ネタ日記

TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。 感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。

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十二国記 繋いだ先の手

 悪夢を視る。
 悪夢、と名付けるにはあまりにも名にそぐわない夢ではあるが、彼女にとってはその夢を見たあとの気分は最悪なのであるからして、悪夢と呼ぶべきものだと思っている。



「――っ」

 声にならない叫び声で目が覚めた彼女は汗ばむ手で褥を握り締めた。
 荒い呼吸を整えると、徐々に瞼を押し上げた。恐怖に打ち勝つためにそっと、勇気を持ってゆっくり。

 予想では目の前にあるのは時間帯を現す、窓越しに見える空模様のはずだった。
 けれど目の前にあったのは黒くてモコモコした、毛むくじゃらのもの。
 ゆっくりと上下に動くそれは生きている証。
 よくよく地面を、辺りを見渡してみれば臥室ではなくて体を休めるために腰を降ろした地面で背後には里木。そして目の前に居るのは異様に大きい熊。

 褥だと思い掴んだそれは、見慣れぬ誰かの上着。大きさと形から考察するに男ものだった。どう考えても香寧が忠誠を誓った者の上着ではない。
 質素で、けれどとても丈夫な生地。しっかりとした作り。

「……起きたか?」

 心地よい低くくなりかけ声が聞こえた。香寧は思わず回りを見渡すが熊しか居ない。
 じっと熊を凝視すると、相手も香寧を凝視していた。
 しばしの間、互いに見合っていた。瞬きの間か、又は数刻か。長い時にも感じられたが、飽きもせずに見続けると香寧はふっと笑った。
 呆気に取られたように熊が瞬く。

「この上着の主がお前か」
「……」

 返事がなかった。香寧は尚も続けた。

「お前、半獣だろう?」

 熊は答えなかった。だが、あからさまに体を強張らせた熊の様子から答えは明白だった。

 香寧がうっかりと林で眠っていたのは雁の隣国である慶東国。
 変わり者の"延"がいる雁とは違い(雁でもないとはいいきれないが)、慶では半獣は白眼視されている。
 そもそも十二国中で半獣が堂々と獣の姿で手歩いても侮蔑の視線を集めない国はない。

 だから熊の反応は当たり前だった。

 香寧は今度はクツクツと体をよじらせて笑った。不思議そうにする熊の気配に香寧は笑い交じりの声で「すまない」と謝した。

「名乗らなくてすまん。私は香寧という。雁の者だ」
「……桓タイだ」
「そうか桓タイか。半獣かと聞いたのに特に意味はない。気にするな」

 名乗り返す熊……桓タイの性格に感心しながら香寧は桓タイへと近づき、膝をついた。
 おもむろに手を伸ばすと何をされるのかと、じっと見られる。
 手負いの獣のような反応に苦笑を浮かべながら香寧はそっと頭の毛並みを撫でた。

「上着、すまなかったな」
「……」

 気持ちよさそうに目を細める桓タイに香寧も珍しく優しく笑う。それは雁の香寧を知るものならば我が目を疑うものではあるが。

「ここは慶のどこに当たるんだ?」
「……麦州だ」
「そうか」

 西の空は茜色へと変わっている。別段里木の下で過ごしたところで困るわけではないがここは、偶然出会った熊こと桓タイに礼でもするかと思い当たった。

「宿に案内してもらえないか?」
「…宿?」
「騎獣も泊まれると尚のこといい。今は居ないが、そろそろ戻ってくるからな」
「……わかった」

 礼を重ねて上着を返すと熊はのっそりと起き上がり、木の影へと向かった。暫くしてさっぱりとした顔立ちの少年が表れた。

 改めて香寧は右手を差し出した。握り返された手のひらは見かけの小綺麗さに反してごつごつとなりかけてた。この手のひらには覚えがある。

「桓タイ、私はこう見えても雁で、下っ端だが剣を持っているんだが」
「……道理で」

 桓タイも香寧の手のひらの堅さに少し気づいていたようだ。香寧はほんの少し気まぐれを起こした。この少年はよい青年へと育つだろうと思ったからかもしれないし、柄にもなく見た悪夢から温もりを与えてくれた少年だからか。

「強くなりたいなら少し教えてやるぞ?」

 その時に少し躊躇した少年は、暫くして真剣な表情で二本の木刀を手に戻ってきた。

 香寧は珍しく気を回し、旅で慶に寄るときは麦州を立ち寄るようになった。


 桓タイがやがて麦州州師へと入隊するまで二人のこの関係は続いたが、その後互いに見えることはなくなる人間。再会するのは、赤楽二年。和州にて、であった。



(熊の親切)

熊といえばやっぱり桓タイ?

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十二国記 東の海神 1

 雁国に王が立って二十年近くの歳月が過ぎた。 衰弱していた国土の疲弊は未だ激しく、人々も心に傷を負っていた。けれど、歳月は傷を塞ぐことはなくとも癒していっていた。
 目に見えぬ速度でゆっくりと。

 疲弊した大地には、即位間もない王が王宮の資材を投げ売って確保した植物が植えられ、ようやく僅かながらに根を張り始めている。
 枯れた枝しかない木。剥きだしの大地。転がる人の死骸。力を無くした妖魔。
 もうこの姿を見られる場所は数少ない。特に州の中心地であれば尚。




 雁国に龍旗が揚がったあの年。
 子ども同士身を寄せ合いその日その日を過ごしてきていた。大人になるにつれ、"まとも"な暮らしをできるようになったために香寧達孤児はそれぞれ自立していった。
 あるものは養子に貰われ、あるものは商いを起こし。あるものは冬器を手に護衛業。リーダー格であった香寧は冬器を手に傭兵家業を行っていた。


 蓬莱と違い、この世界では子どもは女の腹ではなく里木になる。夫婦が枝に紐を結び、天帝がこの男女に子どもを授けるに足ると判断されると枝に卵果がなる。これが子どもである。
 蓬莱では何から何まで雌の腹にできる。言われてもあまり想像はつかないが、ただ一つ"産む"という行為がないおかげで女は男と同等に見られることがよい。と彼女は思っていた。


 傭兵として雇われるようになりはや8年。その筋では有名になっていた香寧は元州に居た。
 昔は目立って栄えていたここは今では他州と比べると大差ない程になっていた。
 むしろ、見劣りするのは元州であった。活気があるようで、どこか寂れた州。
 ――それが香寧の見解だった。



 宿を取って間もなく空に暗雲が立ち込め全てを流し去るように雨が降り出す。
 尋常ではない雨が降る。
 雨季の到来だった。
 この時期、国中のあちこちで川が氾濫する。その度に人民と作物が被害を受ける。それはまるでかつての国中で起こった悲劇と似ていた。

 王が居ない国は荒れる。いくら朝廷――この場合は仮朝だが、仮朝が調っていようと天災を防ぐことはできない。
 さらに、国中で妖魔が出現する。人の足では決して逃れることのできぬ妖魔による被害。
 天候が荒れ、雨は降らず作物が枯れる。それらは牙を剥いた妖魔のごとく容赦なく民を襲った。
 雁の場合は特に酷かった。
 前王、梟王が道を誤り大勢の民が殺され尽くされた。台輔が失道の病に陥ってからは梟王の苛烈さは増した。
 王は麒麟を介して天帝が選ぶ。王が道を誤ると天帝からの国を託すとの命(めい)、すなわり天命を失う。天命を失うと麒麟が病にかかる。これを失道という。王が天命を取り戻さねば麒麟は死に、やがて王も死ぬ。

 よって梟王は台輔が身罷った後数年で崩御した。
 だが残された民に、道はなかった。

 梟王の元で残った官吏は己の私腹を肥やすものばかり。民はその後官吏にも虐げられた。
 梟王が天命を失った時から国土には妖魔が蔓延り、天災が続いた。

 不作に不作が続き国土は枯れた。口減らしのため子どもが数多く殺され、妖魔も食べるものがないために餓死する始末。

 蓬山にあった雁の麒麟の卵果がかえり、麒麟が王を探すも見つけられず麒麟までもが寿命で倒れた。
 その後またも数年と経ち、蓬山に麒麟の卵果がなる。だが、次には蝕で蓬莱へと流されてしまった。


 数年後、延麒は帰山するが数年の後出奔。蓬莱から延王を連れて戻った。

 待ち望んだ延王が即位した。だが、その彼の方は政に興味がないらしい。

 毎年の用に氾濫する川の整備をしようとしないところからも伺い知れる。

 民は王が政に興味があろうとなかろうと、今ある昔とは違う生活を送れればそれでよしとおもっついる節があるのも否めない。

 だが、伝え聞く王の勅命による政策から判断するに昏君とは思えぬ、と香寧は判断している。


 今、空を覆うこの暗雲のように晴れることのない暗闇が雁を覆っていた。



(白い闇)

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ハリポタ

双子が主人公ズ
兄:ロルフ・レイリアス
妹:フィリエ・レイリアス


**


闇の勢力が着々と力を伸ばす時。
偉大なる大魔法使いによって守られているホグワーツでは今日も今日とて生徒は勉学に励んでいた。


そんなある日の日曜日。


「そろそろ豆腐が無くなりそうね、ロルフ」
「そうだねぇ。味噌はまだ持つようだけど……」

双子でありながら兄はスリザリンに、妹はグリフィンドールに所属する変わった双子は庭で何かを広げて座っていた。

ぽかぽかと天気が良い日は外で食べるべきだという心情の二人は厨房で食事をもらうとリストを見ながら緑茶を啜っていた。

そんな時、庭を無表情で横切る人間がいた。
全身真っ黒で土毛色の顔にべとべととした黒髪。
双子の兄であるロルフと同じ寮生であるセブルス・スネイプその人であった。

不機嫌オーラをいつにも増して振り撒いている姿から察するに朝から『悪戯仕掛け人』を名乗るフィリエの(多分)友人達にやられたのだろう。

顔を見合わせた双子はにへらと笑うとロルフが杖を出した。

フィリエは杖を振りコップを一つ出し、緑茶を注いだ。
それを見届けるとロルフが杖を振りコップをふよふよと浮かせた。そしてそれをセブルスの目の前まで浮かせた。


突然目の前に現れたコップにも動じずにセブルスはそれを手に取ると辺りを見渡した。
彼に見えるように双子は手を振る。

セブルスは双子を見つけると少しの逡巡の後に足をそちらへと向けた。


「ハーイセブルス。おはよう?」
「……おはよう」
「朝ぶりだねセブルス。一緒にお茶しないかい?」

言葉を紡ぎながらセブルスの座るスペースを空ける。
彼は小さくため息を吐くと静かに靴を脱いでシートの上に座った。
セブルスの行動を満足そうに見るとフィリエは饅頭を取り出した。

「食べる? 今日のは甘さ控え目だよ?」
「……頂こう」

まぐまぐと饅頭を食べるセブルスを満足そうに見たロルフは再度リストへと目を落とした。隣に座るフィリエも額を突き合わせてリストを覗く。

「もういっそのことこっちで作っちゃう?」
「そうだなぁ…。でも水が違うしね」
「……何の話だ?」
「うん? 僕たちのエネルギー源の仕入れをどうしようかと思ってね。豆腐だったら頑張ってみれるんじゃないかな?」

食べ終え何気なく緑茶を啜るセブルスにロルフは適当に答えた。始め、緑茶を差し出してもスゴイ顔をして飲んでいたセブルスは今ではなに食わぬ顔で飲むようになっていた。

「湯豆腐作ったら豆腐がなくなっちゃってね」
「送ってもらう訳にも行かないからいっそのこと作ってしまおうかと思って」
「自分達で作れるものなのか?」

セブルスの言葉に二人は同時に同じような苦笑いを浮かべた。

「やっぱりきちんと調べてから作り始めるべきかな?」
「知りもしないで作ろうとしていたのか?」
「材料は大豆ってわかってるからなんとかなるとか思ってたよ」
「……君達は賢いのか賢くないのかわからない」

フィリエが勧める饅頭をセブルスはまた一つ手に取った。結構気に入ったらしい。

「じゃあやっぱり豆腐の自家生産は諦めて、今日の夕飯作ろっか」
「そうだねー、今日はおでんがいいな。セブルス食べる?」

向き合いあっていた双子が同時にセブルスを見た。彼は動じることなく小さく頷いた。

「……君達がいいなら、頂こう」
「よし、じゃあまず大根の調達だ」
「じゃあ僕は厨房で材料を揃えてもらって来るよ。前に頼んでおいたし」


立ち去るロルフを見送るとフィリエも饅頭をまぐまぐと食べ始めた。

「……ん? フィリエ」
「なーに?」

セブルスは思い当たったことを口にした。その内容にフィリエは目を大きく見開いた。


「そうね! その方法があったわ! ありがとうセブルス!」

彼女は羊皮紙を取り出すと何かを書き留め、杖で叩いて消した。
その方法はセブルスは知らないがロルフの手元に送ったのだろう。




『レシピと見本を渡せば屋敷しもべ妖精が作るのではないか?』



**

オチも何もなし!ただセブルスを出そうとして失敗作です。

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十二国記 元年

「国が欲しいか」

そう問いかけた六太に、尚隆は天を仰ぎながらも、迷いなど何も感じさせぬ声で返す。

「――欲しい」
「やせ細った、何もない国でもか」

人々にも妖魔にも食べるものなど何もない。
ただそこに国があるだけ。そんな雁の国土が六太の脳裏に浮かぶ。
己が無駄に過ごしたこの幾年の間に国土の荒廃はさらに進んでいるだろう。

残った民は三十万。

尚隆は命が削られていくのを感じさせぬ笑みを浮かべ、体を起こした。

「国の大小など関係ない。俺は国を継ぐべく育てられ、親父から国を継いだ。だが、もうその国もない。・・・国のない殿などお笑い種ではないか。それだけだ」
「・・・国土が荒廃すれば人心は惑い、お前の言うことなど聞かなくなる」
「そんなものは俺の甲斐性だろう」

ただ笑う尚隆を六太は感情を抑えた瞳でじっと見た。

「・・・・・・国と民と、城をやろうか」
「お前がか?」
「お前がやる気があるのなら。・・・お前がそれを望むなら、お前は今ある全てに別れを告げなければならない」

じっと見る六太の言葉に尚隆は失笑した。

「俺に別れを告げなければならないものがあるのなら教えてもらいたいものだ」
「二度と瀬戸内の海にも戻れない」
「・・・・・・ほう」
「それでもよければお前に一国をやる。――・・・玉座がほしいか」

舟に打ち寄せる波の音を聞きながら、尚隆は静かに言った。

「――ほしい」

六太は頷き、狭い舟の中を尚隆の傍まで歩み寄る。足元に膝をつき、深く頭を垂れた。

「天命を持って主上にお迎えする。これより後、詔命に背かず、御前を離れず、忠誠を誓うと制約申し上げる」
「・・・六太?」

六太は手をついたまま顔を上げ、尚隆を見上げた。その顔は彼には珍しく困惑していた。

「許すと。国が欲しいと言え。俺を臣下に迎えると。・・・お前が期待を背負っているというのなら、俺が国を背負っている」

尚隆は困惑の表情を一転、静かに六太を見た。その視線はそのまま瀬戸内の海へと向かう。
見えるのは絶え間なく揺れる波だけ。そこに何を見ようとしたのか、六太は知らない。

「―・・・臣に迎える。ただし、必ず一国だぞ。城だけでも土地だけでも許さぬ」

六太は首をたれ、尚隆の足へと額づいた。
王宮と、荒廃しつくした土地、僅か三十万の民を思い。

このときより、尚隆は延州国の王となり、六太は臣となり半身を得た。



その時を同じく。十二国北東。雁州国光州にて、一人の少女が走っていた。



黄旗が上がり数年。今でも延麒の選定を受ける為に蓬山に昇山する者はいるのだろうか。そう心で呟く。

この荒廃した大地でそんなことを出来る人間は極少数。
幼い心で、香寧は嘲笑する。

この国で昇山できる人間が王に選ばれる訳がない。

生き残って、昇山できる余力のある者は天に選ばれるほど、素晴らしい人間など居るはずがない。
自分はまだその頃に生まれていないが、王に選ばれるような素晴らしい人間など前王の時代に殺戮されたらしい。

香寧が生まれたのは王が居なく、大地がこれ異常ないほど荒れ果てているときだった。
前の延麒が王を見つけることができずに斃れ、ようやく新たな延麒が孵り選定を間近に控えているときだった。

僅かな希望が見えるとはいえ、香寧たち力を持たぬ子供にとっては麒麟が選定に入ろうが、王が選ばれようが日々が死と隣り合わせ。
食べるものもない。口減らしのために力のない子供が殺される。
何度、大人に殺されそうななったろうか。

その度に、命からがら抜け出し、子供同士身を寄せ合い眠った。

今も、生きる為に食べ物を命がけで手に入れ、大人に追われている。


何故、ここまでして生き延びなければならないのだろうか。


日々そんな問いを自分に投げかけるが、答えがない。


「香寧、きょうの分は?」
「・・・なんとか人数分」
「さっすが香寧!おーいみんなー!」

子供達の中で一番身軽な香寧ともう一人の少年が主に食料を集めてくる係。
自分がいなくなれば、仲間達も生き残ることができない。
そのために香寧は、そのような問いを持ちながらも毎日を細々と生きていた。


「・・・そういえば、りゅうきがあがったらしいよ?」
「龍旗?」

身を寄せ合って食べ物を食べていると、もう一人の食料係の少年が言った。

「香寧、りゅうきってなに?」
「・・・龍旗は、新王が選ばれたときにあがる旗」

大人たちの合間を縫って食料を手に入れる香寧は、この年頃にしては聡明であった。そのため、子供達はもっぱら難しい話は香寧に尋ねる。

「王様? 王様が選ばれたの?」
「・・・のはずだけど。・・・しばらくしたら即位式で王旗もあがるんじゃない」

王が選ばれても、自分たちの生活は変わりはしない。

何故か漠然とそう思った。
子供達は王が立ったことにはしゃいでいるが、とりあえず確実なことは妖魔が王都周辺ではでなくなる。

国が富むのは大変なことだといわれている。王が短命ならば、すぐに幸せは終わる。

(・・・とりあえず、3年もってくれなさそう皆で南に行こう。奏南国は百年近く続いているっていうし)

未来に夢を馳せる周囲とは関係なしに、香寧はそう考えていた。

(海沿いに行けば奏南国。南は冬も暖かいと聞く)

周りとは違った未来を馳せる香寧の予想を裏切り、雁州国はそれから後
20年は平和な治世が続いた。

その間に子供達の集まりは自然とわかれていき、香寧は剣を覚え冬器を手に傭兵家業などを営み、生活を紡いでいった。


大化元年
延王尚隆即位。香寧は光州で子供達を身を寄せ合っていた。


大化二十一年
元州に乱が起こる。

そこで、香寧は自分の生き方を180度変える者と出会う。



**

十二国記書きたい病です。読みたい病でもあります。
すごく小野主上の書き方がすきなのですが、私には無理です・・・。
書くならできるだけ原作の雰囲気に忠実に行きたいのですが・・・。

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十二国記 これが雁州国の常

やはり似たもの同士の主従関係



「香寧! 行こうぜ!」

何処か切羽詰ったような声に呼ばれた本人は気だるげに振り向いた。
その視線の先には頭に布を巻いた、この国で二番目に尊き獣。
しかしてその実態は仁の獣で、民の具現。

十二国に一頭ずつ在する麒麟。この雁州国の麒麟である延麒は雁州国王延と同じく政よりも市井に降りるのを好む。

今日も今日とて山積みになった書類に嫌気がさして、優秀官吏達の目を盗んで逃げてきたのだろう。ちゃっかり市井に下りる準備をしてから。

麒麟は神獣。だが、普段は人型をとっている。これを転化という。
転化をすればその性を抜けばただ人と同じに見える。
だが、麒麟の鬣である金色(こんじき)の髪は麒麟にしかない。
民は麒麟を見たことがなくともその鬣の色で知ることができる。

なので、民に混ざるために髪を隠す。

武官にあるまじき軽装の香寧を捕まえると延麒六太は一目散に厩に向かう。
目的は六太の主人である延王の騎獣。スウ虞のたまである。

禁門で鞍をたまに取り付けるのを手伝いながら、香寧は遙か後方の気配を探った。
今この現場を取り押さえられると自分もあの『無謀』殿に六太とともにこってりと絞られる。

『――台輔』

六太の影から声がした。それはその一言名を呼ぶだけで二人に事態を知らせる。

「急げ、香寧!」
「分かってますよ」

このまま掴まれば大司寇に禁軍に左遷されてしまう。
そんなのは堪ったものではない。
さっさとたまに騎獣すると、香寧は六太へと手を伸ばした。

もうそこまで足音は近づいている。事を察知したもん人がどうしようか考えあぐねている。

「台輔、お早く」
「だーかーらー、六太だっつーの」

そう悪態付きながら六太は香寧の手を握った。
麒麟である六太は非常に軽く、香寧は自分の後ろに六太を乗せると、たまを飛ばせた。

「台輔!!」

たまが飛翔し、もん人が慌てて呼び戻そうと身振り手振りをする。
扉の向こうからは殺気立った大司徒の怒声が聞こえる。気配を感じ取ると、大司寇もいるようだ。

思わずぶるりと身震いした香寧は、小声で六太に提案する。


「・・・主上を手土産にすれば、左遷は免れるでしょうかね?」
「さあね? ・・・なあ、禁軍の将軍になるなら栄転って言うんじゃないのか?」

ごまかしておきながら六太も同じく自分の主を捕まえる方法を頭にめぐらす。

「忙しくなるので私にとっては左遷です」
「・・・んなら尚隆捕まえてたまに送ってもらうか」
「それは妙案です」

恐らく彼も自分たちと同じ目的地、関弓に居るだろう。
麒麟にとって王を見つけるのは朝飯前だ。

何処かで縄を準備しなければならないな。と二人で話し合いながら関弓を目指す。

頬に受ける風がとても心地よかった。



**

というわけで延州国の常。
香寧は六太と図ってよく出かけるようです。逆もまた然り。

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