※もしも「青空の下で」の主人公と絳攸が恋仲となりめでたく結婚したらという設定です。
※未来ネタの子供ネタが苦手な方はスルーでお願いします。
デフォルト名:有紀
大人の手の腕の中にすっぽりと収まる小さな体。指先を驚くほどの強さで握りしめる小さな細く頼りない手。
小さくて、守らなければならないと胸の奥で自然と思う。
「小さいな」
「まだ幾日と経ってませんから」
「絳攸にも有紀にも似ていないな」
「そうか? 目元のあたりは有紀にとてもよく似ている」
小さな寝台で穏やかな顔をして寝ている赤子を取り囲むようにして大人二人が覗き込んでいた。養父鳳珠と義父の黎深である。
二人共に数日前に誕生した初孫の顔を見に来たのであるが、残念ながら夫君である絳攸は急な仕事で外出中である。よって鳳珠は仮面を外して心おきなく初孫の姿を堪能していた。
赤子というのは見ていて飽きないものである。寝ていながら表情を次から次へと変えては見ているものの心を和ませる。
祖父となった二人の整った顔はこれ以上ないほど弛みきっていて、流石の有紀も苦笑いを浮かべていた。
邵可と百合より事前に黎深に気をつけろ(構い過ぎて泣かせたり、必要以上に物を買ってきたりとか)と言われていたがこの分では鳳珠も気をつけた方が良さそうである。
おそるおそる赤子の頬を指で突っついてみたり、指を握られて驚いたりしている姿は「魔の戸部の戸部尚書」の姿からは程遠い。
「目を覚ましたぞ」
「……可愛いな。おじいちゃんだぞー」
ああ、ついに鳳珠までもが。苦笑いを浮かべて有紀はお茶の準備をしていた席から離れた。目を覚ました赤子はきょろりきょろりとあたりを見渡すのに忙しい。自分をじっと見下ろす二つの視線をきょとんと見て、にこと笑い声を上げずに楽しげに手足を動かす。
声もなく顔を弛ませる祖父二人に有紀はもう耐性がついたのか動じなかった。
そっと抱き上げてゆらすと赤子はうれしそうに笑う。
「抱かれますか?」
「だ、だがまだ首が座っていないのだろう?」
「ふ、私は昔秀麗を抱いたことがある!」
不敵な笑みと共に伸ばされた黎深の腕にそっと渡す。きちんと抱いたことを確認してからそっと腕を引いた。
「私がおじいちゃんだぞ!」
「……黎深、泣き出しそうだ」
黎深に抱かれた子は不思議そうに祖父を眺めていたが、途端に足を踏ん張り全身で拒絶を露わにした。それに衝撃を受けた黎深は慌てるが、赤子はよけいに嫌がるだけだった。鳳珠は泣き出しそうだと思い、少し引き腰になるが子は二、三回抗議するように泣き声をあげるとまた足で抵抗した。
有紀は笑って黎深から我が子を受け取ると、安心させるように抱き揺らした。落ち着き再び満足げに笑った子を今度は鳳珠に差し出すが、鳳珠は勢いよく首を横に振った。
「少し抱き方が気に入らないとああやって抗議するんです。黎深さまを嫌いなわけではないですよ」
「抗議?」
「はい。絳攸もまだ不安そうに抱くのでいつも抵抗されてます」
だがここ数日でようやく大人しく抱かれるようになった。まじめな顔をして「どう不安なのか言わないと分からないだろう」と説いている絳攸はなんだか見ていて面白い物だった。有紀は落ち込んでいる黎深に笑いかける。
「黎深さまも馴れれば大丈夫です。また抱いてあげてください」
「……そこまで言うならまたやってやってもいい」
有紀の腕の中でむずがりながら泣き声をあげない孫を見て鳳珠は自分が思い描く赤子と違うことに首をひねる。
「それにしてもあまり泣かないな」
「そうですね。でもちゃんと泣くときは泣いてますから大丈夫です。赤ちゃんは泣くのが仕事ですし」
ねー。と笑いかけて指を差し出すときゅっと握られる。その光景に二人の顔が弛むが有紀は違うことを思った。
気づけば彩雲国にやってきて、体は幼子になっていた。そんな有紀を鳳珠が拾い家族になってくれた。そして黎深と絳攸に出会い、たくさんの人に出会った。
物語の主人公の様に幼なじみとなった絳攸と恋仲になって、結婚して。一人の子を生んで。
新しい家族に、日々楽しく過ごしている。
言葉では言い表せない感情が胸にこみ上げてきて有紀は目を閉じた。
「鳳珠さま」
「どうした?」
優しい養父。彼が有紀の帰る場所だった。今は絳攸の隣が有紀の居る場所だが、鳳珠は今でも有紀の帰る場所。
「わたしは、すごくしあわせです」
***
「絳攸と主人公の間に子供が産まれたら鳳珠と黎深はデレデレになるに違いないです!」
のメッセージから突発的に生まれました。テスト勉強はどうした!という心の声は無視しました。
確かに絶対にデレデレになります。間違いない!
実は先月に母の友人の娘さんが出産されて帰宅していたので遊びに行ったのですが、生後10日前後の男の子だったのがこんな感じでした。
私や姉が抱くと抱き方が気にくわないらしくて足で反発されした(笑)うちの母が抱くと、さすが子育て経験者。全くいやがられず赤ちゃんもきょとんとしてました。「おかあさんじゃない、けどだれ?」みたいな顔でした。
泣いても三回泣いて終わり。でもじっと見てると笑ったり顰めっ面になったりと。
そんな赤ちゃんを思い起こしながら。
さてさて、ここで問題が少し発生しました
・鳳珠の絳攸の呼び方は?
・子供の名前はどうする!!
「絳攸殿」とか考えたのですが、いまいちしっくりせず……。「李絳攸」もいまいち。「義息子殿」?
子供の名前は思いつかず性別もいまいち思いつかなかったので、明記しませんでした。
有紀、絳攸夫婦には何人子供ができるんでしょうか。うーん。
みなさんどう思われるか教えてください!
私的には定番ですが、有紀そっくりと男の子、絳攸そっくりの女の子みたいな感じです。
おっとりマイペースで、でもしっかりしてる兄と、きびきびとしたでもちょっと抜けた妹。みたいな?
[9回]
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