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小ネタ日記

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アゲハ蝶 爪先を彩る妖精

 久しぶりに店にきた幼なじみは噂ではもう帰らぬ人のはずだった。


「お久しぶりです、エミリア」

 にこやかに笑みジェイドは特に驚いた様子のない幼なじみに手を振った。

「あらジェイド、元気そうで何よりだわ」
「いえいえ」
「そちらの後ろで驚いている方々は?」

 ジェイドは肩を竦めると入り口であんぐりと口を開けている旅の道連れたちを振り返った。


「しょうがない方たちですね。あなた方は、そこが入り口だとお気づきですか?」
「申し訳ありません、ジェイド」

 いち早く我に返ったイオンが呆然と立ち尽くす皆を入り口から退くように促す。それに乗じて我に返ったアニスはジェイドにびしり!と指を突きつける。

「た、大佐が……。大佐が、女の子のあこがれのお店が行き着けぇ?!」

 だがアニスの叫びも介さないのかジェイドははははと笑いながらエミリアに言った。

「だ、そうですよ。よかったですねぇ、エミリア」
「しかもなんか親しげですよイオン様~!!」

 納得がいかないのかアニスがイオンの腕をぶんぶん振り回すがイオンは苦笑を浮かべるだけだった。

「お、落ち着けアニス。いくらジェイドだって親しげな女性の一人や二人や」
「さすがに大勢はおりませんけどね」
「ほ、ほらな?」
「ガイだって動揺しているくせに」

 漫才でもしているかのような彼らの会話にきょとんとしていたエミリアだが、不意に目元を和ませて小さく優雅に礼をした。それに合わせてかジェイドはエミリアをさしてにこやかに笑った。


「幼なじみのエミリアですよ。エミリア、こちらはまあ愉快な仲間たちといった感じです」
「ずいぶんな紹介の仕方ですこと、失礼ですわよ大佐」
「おや、これは失礼」

 にこにことジェイドたちのやりとりを見ているエミリアは、時計を見てはっと驚いた。

「ねぇジェイド」
「なんですか?」
「私、あなたが死んだと聞いたのだけど」
「ええ、まあこの通り五体満足ですけど」
「それは見ればわかるわ」

 肩を竦めるジェイドと会話の内容の割に特に不思議な顔をしていないエミリアを見てルークは首を傾げた。

「なんか、ケテルブルクのジェイドの妹の反応がふつうじゃない気がしてきたんだけど」
「……いや、あの人の反応がふつうだと思うぞ」

 次第に驚きではない焦りを顔ににじませてエミリアはジェイドを見て、不意にティアやアニス、ナタリアを見た。

 三人はジェイドとエミリアのやりとりに既に興味をなくしたのか店内に陳列している棚を物色していた。

 楽しそうに笑い合う姿を見て、徐々に落ち着きを取り戻すとエミリアはゆっくりと笑みを浮かべた。

 そんなエミリアを見てジェイドもあからさまなため息をつく。

「何に焦ったかと思えばもう店主の顔ですね」
「……陛下には顔をお見せしたの?」
「ま、一応は」
「鬼籍入りしてなかった?」

 そんなことを心配していたのかとジェイドは肩を竦めて笑う。

「陛下があなたと同じように信じていてくださったようなのでまだ大丈夫でしたよ」
「そう……無事でよかったわ」

 ふわりと微笑むとエミリアは三人のそばへと静かに移動した。

「……でもアンタにも笑いかける相手がいたんだな」
「ただの“おさななじみ”ですよ。彼女はね」
「……ってことはあのディストとも……?」

 ジェイドは目を細めると勝手知たたる店内と言わんばかりに備え付けのいすに座った。


「あなたならこの色の方が似合うわよ」
「え……っ?」

 おいてあったネックレスを眺めていた三人の邪魔にならない位置から一つずつ手に取るとひらりと見せて笑った。

「興味あるお年頃ってやつでしょ?」
「え、えと……で、でも旅では邪魔になるだけだし…」
「こうやって街に来たときくらいおしゃれしたくない?」
「そ、その……」

 黙り込んでしまったティアに微笑みを浮かべているとアニスが勢いよく手をあげた。

「はーい、お姉さん大佐とどんな関係ですか?」

 その質問に思わず首を傾げるとエミリアは正直に答えた。

「おさななじみよ?」
「……あやしい関係?」
「違うわよ?」
「……そういえば、大佐の行きつけだからと言ってこんなに大勢でお邪魔してもよろしいのでしょうか」

 ナタリアが不安げに店の奥につながる扉を見るとエミリアは楽しそうに小さく笑った。

「あら、気にしないわ。ジェイドにつき合える人たちは貴重だもの。こんな店でよければ歓迎するわ」

 なぜかティアとアニスとナタリアとガイの四人が驚いたようにエミリアを見た。

 四人がなぜ驚いているのかわからないルークはイオンと顔を見合わせた。

「おや、エミリアもずいぶんと有名になりましたね」
「まあ、庶民は両国をよく行き来するしな……」
「大佐自体有名ですが、大佐のお知り合いの方々も名が通った方が多いのですわね……」

 よけいに訳が分からないルークは困ったように笑うエミリアをじっと見つめた。

「改めまして『胡蝶』の店長兼デザイナーのエミリアです。ジェイドをよろしくお願いしますね」



(不思議な言葉でいくつかのお題)


思ったように書けないのがアゲハ蝶とアビス本編を絡めること。
前から別場所でチャレンジしているんですけどうまくいきません……

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