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小ネタ日記

TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。 感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。

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青空 繋ぐ扉の謎

 本日、鳳珠は公休日である。
 そして、なぜか黎深や悠舜と出かけるのに有紀も連れて行ってくれるらしい。
 公休日に三人でお出かけしている時は有紀はそのまま絳攸と一日を過ごしているのだが、どうしたのだろうかと内心首を傾げながらも行き先はどうあれ誘ってもらえたことが嬉しかったので、首を縦に振った。


 軒に揺られて数刻。

 ついた場所は、鳳珠の屋敷以上に広い邸宅であった。
 しかも、なぜか黎深がそわそわとしている。しまりのない顔をしていて、なんというか警察がいたら(この国にはいないらしいが)職務質問をされそうである。

「れ、黎深さま・・?」
「なんだ」

 けれど、話しかけると途端に普通の表情を浮かべる。けれど、瞳は嬉しさに滲んでいた。
 けれど、どう考えてもこの豪邸に自分は場違いではないかと思わず鳳珠の服の端を握り締める。
 そんな有紀の珍しい行動に鳳珠が、驚いたようなけれど優しい表情でしゃがみこみ、視線を合わせる。

「どうした」
「えと・・・その。私、場違いだと思うんですけど・・・」
「だそうですが、黎深。どうなさいますか?」

 悠舜と鳳珠の視線を向けられた、黎深は屋敷を見ると再び顔を緩ませる。黎深の大好きな人の屋敷なのだろうか、と思い有紀も黎深を見ると突然振り返った黎深と目が合った。
 やはり屋敷から目をそらすと途端に普通の表情を浮かべている。何故、そこまで完璧に感情の制御を行えるのだろうかと、場違いだと思ったことを忘れて不思議に思っていると、黎深が片手を差し伸べた。


「ここは私の兄上の邸だ。兄上がお前も連れて遊びに来いと言っていらしたから、お前もつれてきた」
「黎深さまの、兄上さまですか・・・?」
「さっさと来い」
「え、あ。わっ・・・」

 ぐい、と手を引っ張られてそのまま邸の門へと連れて行かれる。黎深に有無を言わせずに引っ張られるのはこれで何度目なのだろうか、と考えながらも助けを求めるように鳳珠と悠舜を見る。だが、鳳珠は足の悪い悠舜に手を貸していて、残念ながら有紀の助けを求める視線には気づかなかった。


(5歳児じゃないんだけどなぁ・・・)

 彩雲国に来て一年。一つ年上ぐらいだと思われる絳攸が10歳になったので、おそらく有紀はこの体は9歳ぐらいだと思っている。
 9歳といえば、小学校3年か4年である。

(・・・手つないでったっけ?)

 思い出せないが、見上げる黎深が嬉しそうだからまあ、いいかと完結させた。






「ほう、そなたが鳳珠殿の養い子か?」
「そうですよ、義姉上」
「名はなんという?」

 黎深の兄である穏やかな顔立ちのいかにも「父親」然たる人の名前は紅邵可というらしい。
 そして、その隣にいた鳳珠にも勝るとも劣らない美しい顔立ちの女性は邵可の妻で薔君と名乗った。
 見た目はいかにも深窓の姫君、なのに躊躇することなく床に膝をつき有紀と目線を合わせてきたことに有紀はとても驚いた。


「有紀、と申します」
「よいよい、堅苦しい言葉など使わんで。のう、背の君?」
「・・・!?」
「どうかしたかい? 有紀さん」

 邵可の奥方の話し方といい、その『言葉』といい。全てが有紀を驚愕させ、同時に感動させた。
 感極まってしまった有紀を不思議そうに見る邵可夫妻だが、黎深率いる三人はこの夫婦の一人娘秀麗と家人の一人静蘭と共に遊んで(?)いる。
 ので、助け舟は誰も出してくれないので有紀はなんとか思いとどまり正直に話すことにした。

「えと、その・・・。奥方さまは本当に、邵可さまのことを大切に思っていらしているんだなぁと思ったら・・・」

 言葉にし始めたら恥ずかしくなってきた有紀は頬を染めながら、恥ずかしそうにちらちらと二人を見た。

「・・・ふむ。妾はこういう反応をとられたのは初めてだからの、よくわからんが。邵可、わかるか?」
「うーん・・・?」
「その・・・。背の君って、本当に大切な方にしか使わない呼び方だと私は思っていたので・・・」
「ほほう」

 ぽす。と頭の上に手が載せられた。そして、にんまりと笑った奥方殿は楽しそうに有紀の頭をなでていた。

「ほんに、有紀殿は面白いのう」
「へ、えと・・・。ありがとうございます?」
「うん。邵可、ちょっくら有紀殿と女二人で話したいことがある。黎深達の相手をしてやってくれぬか?」
「うん、いいよ」

 あっさりと追い払われに応じてしまった邵可によくわからないままに軽く会釈を返すと、笑い返されてしまった。
 そして、目の前にいた奥方は移動していて、隣の席をぽんぽん、と叩いていた。まるでここに座れといわんばかりに。

「して、有紀殿。おぬしは、不思議なところからまいったの」
「・・・わかるんですか?」
「しかも『扉』を無断で潜ったな?」
「『扉』?」

 扉、といわれるようなものを潜った覚えは有紀にはない。
 ただ、階段から落ちただけだ。
 だが、奥方はまじめな顔をして指で軽く長方形を描いた。見えない何かを空でなぞるように。

「偶然何かの拍子であいたのを潜ってしまったのじゃな。『扉』には『仲介人』が本来はついておる。本来ならば『仲介人』がおらねば開くことはない。して、そなたは無断で『扉』を潜った。二度と、潜れることはないだろう」
「・・・・・・なんとなくですけど、帰れないことはわかっています」

 奥方の示す『扉』と『仲介人』というのはいまいちわからないが、それが意味することは決して帰れないということである。
 それは、理解している。あらゆるものから『瑠川有紀』が消えた、あの日から。

 すらりとした指が有紀の頬を伝った。奥方が綺麗な指で有紀の輪郭をなぞっていた。

「奥方さま・・・?」
「そなた、面白い眼を持っておるの」
「目?」
「眼じゃ。色とかではないぞ」

 元から黒いですといおうとしたが、先手を打たれてしまった。
 きょとん、と奥方を見ていると彼女は妖艶に笑う。その美貌でその笑みは、はっきり言って心臓に悪い。

「有紀殿。そなた、黎深を見て最初にどう想うた?」
「黎深さま、ですか・・・?」

 小さく顎を引いた奥方はようやく有紀の顔から指を引いた。
 ほっとしつつ、黎深に会った時のことを思い出す。


 倣岸不遜で、居丈高な態度。覗き込んだ瞳はとても、冷えていた。


 その時のことをまざまざと思い出し、有紀は知らず知らずのうちに寂しそうな表情を浮かべていた。

「とても、哀しそうな瞳をしていると想いました」
「哀しそう、か。うむ、中らずとも遠からず、じゃの」

 よう聞けや。そう言った奥方は、すごく嬉しそうに笑った。

「有紀殿は、よい眼を持っておる。その眼は、千里眼というわけではないが、その気になれば人の感情を全て読み取ることができる」
「・・・はい」
「じゃあ、おぬしはそこまで人の感情を読み取りたいとは思うとらんから『気持ち』が見えるだけじゃ」
「気持ち?」
「今の妾を見て『嬉しそう』だと。黎深が『寂しい』と、本人も気づいておらぬことに気づいておる。まあ、黎深には我が背の君がおるでの」

 背の君。そう呼んでいる奥方もとても幸せそうに、けれど悲しそうに笑う。
 この人は、いったい何をどこまで知っているのだろうか。

「見たくもない『気持ち』が見えるかもしれん。それは、有紀殿。おぬしの気持ちのありよう次第で見えるようにも見えぬようにもなる」
「え、気持ちのありよう・・・?」
「うむ。まあ、無意識のうちにきちんと使い分けておるようじゃな」


 なんだかよくわからないが、普通じゃない眼を持っているらしい。
 奥方はこの話は終わりだとばかりににっこりと笑い有紀の頭をくしゃくしゃになでた。

「あまり気負うでないぞ。そなたは好きなように生きていけば、自ずと道はできてゆくに。して、有紀殿」
「・・・はい?」
「妾はあまーい菓子を食べたいのじゃが、そなた面白いものを知っておるかの?」
「あまーい菓子・・・ですか」
「なに、今じゃのうてよいのじゃ。また来るときにでも作ってきてくれ。楽しみに待っておるぞ」


 どうやら異国の甘いお菓子が食べたいらしい。
 甘い菓子といわれて思い浮かぶのは、饅頭やら羊羹だが、それはこの世界にあるらしい。
 甘い菓子。
 ケーキ、プリン、栗きんとん。思い浮かぶのはいいが、材料がない。
 首を捻り、考え始めた有紀を見て、奥方は笑った。


「お話はもう終わったかな?」
「うむ。終わったぞ邵可。さて、有紀殿。妾のかわいい秀麗と遊ぶのじゃ」
「秀麗は今日は元気だからね」

 ひょっこりと戻ってきた邵可と、奥方に率いられ黎深達と一緒にいる秀麗の元へと行くと、両手に花(?)を引っさげた有紀を恨めしそうに見る黎深と目があってしまった。
 そんな黎深を呆れたように鳳珠と悠舜が見ている。

「秀麗、新しい遊び相手じゃぞ?」
「はい?」

 新しい遊び相手。その言葉に顔を輝かせた秀麗は、有紀の目には贔屓目なしに可愛らしく移った。
 
「おねえさま、おなまえは?」
「有紀です。えーと・・・」
「しゅうれい!」

 どう呼べばいいのか困り、振り返ると奥方や邵可が「好きに呼んでいいよ」と言って笑っていたので、考えたあげく有紀は秀麗の視線にあわせてしゃがみこんだ。

「よろしくね、秀麗ちゃん」


 有紀に新しい、年下の友達ができた時だった。




**おまけ


「鳳珠さまの子守歌初めてききました」
「・・・家でも歌ってやろうか?」
「え、えーと・・・。今きけたのでいいです」
「・・・・・そうか」
「有紀殿が知っている子守唄はどんなのじゃ?」
「え、うーん・・・?『ねーんねーん、ころーりよ』って言う奴です」
「妾は知らんの。歌ってみろ」
「(微妙に眠れなさそうな歌だけどいいのかなぁ・・・?)」




**


途中までうっかり題名間違えてました(汗)
薔薇姫様の口調がいまいちわからないので、微妙です・・!
これで、邵可様とのつながりができました!秀麗と静蘭も。
あとは、絳攸なのにうまく進みませんー・・・。

後日加筆修正してサイトにアップ予定

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