本館(Radinrop)で連載中のschiettamenteエルドラント編の一部です。
かなりのネタバレでさらに捏造入っちゃうので、
ゲームの内容が変えられるのは嫌という方、又は
ネタバレなんか読みたくねぇよという方は他の小話をお楽しみ下さい。
まあ、読んでやろうかと思われたら右下の[つづきを読む]からどうぞ。
「ちっ!ウジャウジャ沸いて出てきやがって……!!」
切っても切っても数はたくさん居る。アッシュはうんざりしながらも剣を振った
体の隅々の受けた傷が疼く。だが、もうアッシュは『聖なる焔の燃えカス』等と言うのをやめ、堂々と『ルーク』を名乗り、剣を振るう
グラリと体制が崩れ、そこを神託の盾騎士団が斬りかかろうと向かい来る。それを受け止めようと剣を構える。そんなアッシュの耳に朗々と詠う声が聞こえた
「――大気に舞し精霊達よ、清純なる調べを奏でよ……」
アッシュの足元に第三音素と第七音素が結び付き陣を描く
それは優しい光と音を放っていた
「――フェアリーサークル」
淡い幻想的な光が回りに立ち込めアッシュの体を第七音素が癒す。傷が癒え、体が軽い。そして第三音素が目の前の兵の体に纏われ、見えない刃がその体を攻撃し、陣の外へと押し出す
そこをすかさず斬りつける
「大丈夫ですか?」
いつのまにか現れた声の持ち主はアッシュもよく知る、自分の半身とも言え、今先程までの憎悪の対象であったその人間が姉とも母とも慕っている人間であった
数分前……
「出口が一人を犠牲にしなければ開かなかった? だから決闘をして、貴方が勝ったから送り出されるようにして貴方が一人でてきたと。……馬鹿じゃないですか」
「っんな?!」
「貴方達は単独で超振動を起こせるんですよ? ならば何故二人で出てこなかったんですか?」
超振動は使いこなせば武器になる。全ての物質を乖離させる再構築することができる
「ルークもアッシュも超振動を使いこなせるようになったのではないのですか? それなのに…っ」
「っなら! 俺戻って…!」
「ルークが戻ってもアッシュが怒るだけで、なにも前に進めないだろうが」
踵を返すルークをすかさずガイが止める
「…ならばわたくしが行きます!」
「――いえ、戦力が抜けるのは痛いですが、ここはラシュディに行ってもらいましょう」
ジェイドがナタリアの言葉を無視し、先ほどルークに向かって小言を言ったラシュディの肩を押した
ラシュディは頷く
「…わかりました」
「…ラシュディ、頼んだぜ」
ルークの真剣な表情に彼に対しても頷いて、ラシュディはジェイドに敬礼すると今来た道を戻っていった
それを追い掛けようとナタリアが振り返って一歩踏み出すがルークが腕を掴んで止める
「何故ですの?! 何故私に行かせていただけませんの?!」
「彼女は腕も立つ、そして治癒術もそうとうなものだ。アッシュの手助けも出来、なおかつ癒やせる。だから旦那は痛手だとは自覚しながらもラシュディを行かせたんだ」
ガイが冷静につとめてながらナタリアに言い聞かせる
だがナタリアは食い下がらずにガイに近寄ろうとするが、彼は一歩下がる
「いい加減にしていただきたい。時間はありません。ですがアッシュに死んでもらうのは困るのです。だから一番適任だと思われたラシュディを行かせました。これから私たちは彼女抜きで進みます。それがどれだけ痛手だと皆さん、理解しておられますか?」
ジェイドのその言葉にガイ以外の人間は改めてラシュディの役割を思い出す。前線に出ながらもティアやナタリアと共に治癒術を使いこなし、主にルークやガイ、そしてジェイドのサポートもこなすラシュディ
「……俺、頑張るよ。行こう、皆。俺はアッシュにこのローレライの鍵を託されたんだ」
ルークの言葉に頷き、皆は後ろ髪引かれる思いで先へと進んだ
「どこから現れた?」
とのアッシュの問いに、先程まで神託の盾兵が大量に現れた扉を指差した
よくよく目を懲らしてみると、兵達が見るも無残な姿で倒れている
アッシュは思わず真剣な表情ながらに優しさをたたえているラシュディを見た
「どうかなさいましたか?」
虫を殺さないような顔をしていてもやはり彼女は軍人なのだ、と痛感し、同時になんて強い女(ひと)なのだろうと思う
(…そういや、あのメガネの右腕なんだったな)
「先ほどの治癒術で治せなかった箇所はほかにありますか?」
ラシュディに言われ、何故か素直にアッシュは腕を回す。なぜか不快に感じる箇所はない
「……いや」
「そうですか。……よかった」
ラシュディを見てアッシュは恥ずかしそうに、そっぽを向きながら小さなことを呟いた
だがその言葉をラシュディの耳はきちんと拾い、やわらかく微笑む
「……で、どうやってここから出るつもりだ」
「そうですね、貴方がお疲れでなければ貴方の超振動であの扉を破壊してもらえればいいですし。無理でしたら僭越ながら、私が譜術で破壊します」
さらりと笑顔を浮かべるラシュディに少しだけ恐ろしさを感じながら、アッシュは何故あの時その力を使わなかったのかと後悔した
床の中央に力を注ぎこめば良いことに気付いたのでそれを思いつきもしなかった
「…俺がやる」
「体に負担がかかると思いますが、それでも……?」
「やると言ったらやる」
「では、お願いします」
返事は返さずにアッシュはルークを通した扉両手を当てた。神経を集中させながら力を注ぐ
だが背後からスラリと剣を鞘から抜く音が聞こえる
アッシュは慌てて振り向く
そこにはまたどこから現れたのか神託の盾兵が立っていた
「大丈夫ですよ。続けてください」
「だが……」
「私を、信用してください」
ラシュディは二振りの剣を手に持ち、一言二言唱える
その剣には音素が集まり、神秘的な光景を形どる
「――行きますよ」
剣を振るい、受け止め。その最中に詠唱を続ける
超振動に集中するアッシュには、力を解放させる直前にラシュディの詠唱が剣の交わる音と共に聞こえた
「――…聖なる意志よ、我に仇なす敵を討て……――ディバインセーバー!!」
第三音素の集結を感じ、雷の轟が聞こえ、そして目の前の扉は崩れ去った
「…終わったぞ」
「こちらも終わりました」
振り向くとラシュディは剣を収め、もう動かない兵を見ていた
アッシュが何も言えずにいると、振り返り歩き始めた
「……さあ、行きましょう」
改めてラシュディが『双剣のフォルツォーネ』や『白銀の戦乙女』と呼ばれていることを思い知った
***
ある意味ラシュディさんは最強キャラですね……。
そしてあのゲームのシーンはいまいち納得がいかないので、作り替え。ですがこういうのって楽しくないですか? え、私だけ?
ゲームの中に一人だけ付け加えれただけでも話が少し変わります。
それに、こういう名前変換小説って『もしも』が大前提。……なら、もしも。もしも、あそこでこんなキャラがいたら。もしも、こういう行動をしていたら…。
アッシュが生きていれば、ナタリアは取り乱さず、大佐の平手打ちはなくなりますよね。第二超振動も起こらない。もしかしたら、ルークは帰って来れないかもしれない。
そういう狂っていく話を勝手にネジ曲げていきますので。御了承いただけるといいのですが……。
何かございましたら、気軽にどうぞ。
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