何気なく100のお題
026 変身願望(アゲハ蝶・ピオニー)
はぁ……。本日六回目のため息。それをずっと横で聞いていたピオニーは我慢しきれずに横を見た。
隣の彼女は本を読んでいるはずなのだが先程からため息ばかりなのだ。
はぁ……。
「エミリア? どうかしたのか?」
「…へ? あ、ううん。何でもないわ」
「嘘つけ。さっきからため息ばっかり、七回目だぞ」
回数を教えると、不思議そうに首を傾げた。
「ピオってば数えてたの?」
「で、何か悩み事か?」
答えずに言及するとエミリアは困ったように首を傾けた。その拍子に彼女の癖のない艶のある髪がサラリと流れた。
「えと、みんな綺麗な髪の色だなーって」
金、銀。宝石のような綺麗な色ばかりで、自分もその中に入れたらいいのに。そう言った彼女の瞳は寂しげに揺れていて、心が揺れた。
「オレは……」
言いかけて、そっと周りを見回した。他の二人の幼馴染みは見当たらない。
喉が渇く。声が掠れないように、そっと息を吸い込んだ。
「オレはエミリアの髪も瞳も好きだぞ?」
そう言うと彼女は嬉しそうに笑う。
幼心に彼女の笑顔が見れるだけで幸せだった。
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027 敏感肌(企画主・しいな)
「し~い~な~っ」
名を呼ばれて振り向くと満面の笑みを浮かべているセフィアがいた。
彼女が嬉しそうに笑っているのはいいことだが、自分の第六感が小さく警報を鳴らした。
「な、なんだいセフィア」
「ふふふ」
耳元に温かい息を吹き付けられ絶叫するまであと三分。
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028 暴露話(旅主・?)
「アトラス、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」
「なに?」
「クラトスさんとアトラスさんの好き嫌いを教えていただきたいんです」
「いいよ」
その言葉にロイドとコレットが嬉しそうに飛び付いた。
「クラトスはトマト。私は銀杏かな?」
人物に似合わぬ好き嫌いを聞いた二人は聞かなかった事にした。
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029 悪趣味(軍人主・)
「ラシュディ~?」
呼びかけても何故か返ってくる筈の声が返ってこず、覗き込むと案の定。気持ちよさそうに眠っていた。
起こさぬように近くに寄ると、慎重に閉めた扉が開いた音がした。
「ラシュディ?……陛下」
入ってくるなり呆れたような視線を送ってくる奴に肩をすくめて見せる。
「寝てるから説教は後にしてくれ」
「寝ているなら出ていくのが礼儀だと思いますが?」
そういいつつも奴も近くまでやってきて、そして寝顔を覗き込む。
机につっぷすようになって寝ているラシュディの、鈍く輝く髪をそっとよけるその手は優しい。
その様子を見た奴は笑った。
「全く。貴方もラシュディに甘い」
「お前に言われたくないな」
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030 涙(神子・ゼロス)
ぽろぽろと際限なくこぼれ落ちるその雫を指の腹で拭うが、それらは止まる事を知らない。
彼は困ったようにしていた顔を一転し、楽しそうに笑うとそっとその決壊したダムに顔を寄せた。
そっと舐めるとそれらは少ししょっぱかった。
驚きに雫はこぼれなくなった。
「明良は泣き虫だな」
「……うるさい」
安心させる言葉を持たぬ自分が悔しい。
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難産が続きます。
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