何気なく100のお題
031 ひっそりと(軍人主・ルーク)
辺りが静まり返ると、ぱちぱちと焚火の音のみが聞こえる。
寝ずの番であるラシュディは、椅子がわりの木に座りながらじっと焚火を見ていた。
その光景をそっと見ているととても不思議な光景に見える。
いつもは日の光りに当たって明るく輝く彼女の髪が炎の色を反射して違う色に見える。
「眠れないですか?」
突然声をかけられて驚いた。狸寝入りがバレたのかと焦りながら起き上がり隣まで行く。
「ちぇっ。バレてたか」
座って顔を覗き込むといつもの優しいラシュディだった。
「眠れないですか、ルーク」
「……うん」
「早く寝ないと明日も早いですよ?」
「……うん」
そういって俯くと、そっと頭を柔らかく撫でられる。子ども扱いされているようだが、不思議と安心感が身を包み込む。
「大丈夫ですよ、ルーク」
大丈夫ですよ。彼女の声には不思議な催眠効果でもあるのだろうか、段々と眠くなっていく。
「おやすみなさい」
ラシュディが笑った気配がした。
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032 無理強い(教団主・アッシュ)
「だーかーらー、聞いてる?」
「生憎とお前の言葉に傾ける耳は持ち合わせてねぇっ!」
「ふーん…。そんなこというんだ?」
「なんだ」
「もう貸してあげないよ?」
「っキサマ!!」
「大人しく前髪を降ろせ!じゃないと叩くよ!おでこ!」
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033 猫なで声(神子・ゼロス)
「明良~頼みがあるんだけど」
「嫌」
ふいとそっぽを向く彼女の前に回り込むと心底嫌そうな顔をされた。
「俺様まだ何も言ってないんだけど~?」
「嫌な予感がするの」
あながち間違ってはいない。
「な~んでよ」
「ゼロスがそんな声出す時はろくなお願いじゃない」
甘えた声は逆効果らしい
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034 場違い(アゲハ蝶・ジェイド)
あの笑顔で頼まれると断れない。それを見越してピオニーは頼み込んだ。
「……はぁ」
普段ならばしないような豪華な服装。少し気合の入った化粧。
それをしていても、この会場の雰囲気には相応しくないように思われた。
「楽しんでいますか?」
「……さあ?」
声の主を見ると彼はいつも通りの服装だった。そのことに安堵感が込み上げ、隠そうとして苦笑が浮かぶ。
何を言いたいのか理解した彼は軽く肩をすくめた。
「これが正装なので」
「……ふふっ」
――気持ちをほぐしたついでに踊りませんか?
――ええ。喜んで。――いっそ玉座の前で?
眼の前の彼は人が悪い笑みを浮かべた。
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035 一匹狼(傍系主・ガイ)
「いいのか、ルーニャ」
「なにが?」
何処を見渡しても水ばかり。弟分とも言える彼を置いて戻って来た外殻大地。 魔界から道が通じているという湧水道に二人はいた。
彼を迎える為に。
「君の護衛すべきはナタリアだろ?」
「……あっつんが寄ってほしくなさそうだったから」
威嚇するかのような彼の態度。それは幼い頃共に過ごしたルニアにはわかっていた彼の癖のようなもの。
「孤高の狼は拍車にかけて酷くなっていたわ。……癒やせるのは私じゃないの」
悲しそうな横顔にガイは苦笑を浮かべるしか術を持たなかった。
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