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小ネタ日記

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薄桜鬼

デフォルト名:立花眞里(たちばな まさと)

※こっそりBASARAとのクロスオーバーです。
ちょっぴりグロいかもです。




 破裂音が全てを飲み込み、意識は暗転した。四肢から力は抜けていく中、手のひらには湿った土と草の感触。
 遠方では爆発音や、激しい剣戟の音が木霊し、撤退を叫ぶ味方の声。
 過ぎゆく意識の中、幼なじみの男と付き人の忍達が自分の名を叫ぶ悲痛な響きが耳に残った。




 薄闇に染まる京の都。
 賑やかで優しい見かけとは裏腹に冷たい空気が漂うのは、眞里の記憶にある京の都とは異なっていた。
 余所者を排除せんと人々の無意識下の想いが京の街並みを包んでいることに気づくのは、排除される余所者だけ。

 薄闇の中、宿を探すのに意識が彷徨い視線が空を漂った。
 戻り意識を横に向けると、連れの姿は無く。

「っあれほど離れないように言ったのに」

 舌打ちを一つ、懐の柄に手を添え先ほどまでの自分の視界から外れていた道へと足早に向かった。
 夜の帳が降りれば、どの場所、どの時代の町でも一人歩きは避けるべき。加えて、眞里と連れの千鶴は格好の餌食となる女人である。

 男装をしているから少しは安心だが、男装だから故に破落戸に絡まれる可能性もある。
 道中は眞里が睨みを利かせていた為に絡まれることは皆無であった。しかし、はぐれた場合千鶴は格好の的である。そのことを江戸を発つ際に懇々と言い聞かせたのだが、京について気がゆるんだのだろう。

 けれど、千鶴が離れてしまったことに気づかなかった眞里にも責任がある。

 目指す先からは数名の怒鳴り声と乱れた足音が聞こえる。
 間に合えと、駆ける足を早めいつでも抜刀できるように柄を握る手を確かめる。

 先方から断末魔とそれを遮る甲高い哄笑が聞こえた。一瞬背筋が凍るが、断末魔に聞き覚えが無く安堵する。しかし、同時に警戒を強める。
 必ずこの先に千鶴はいる。

 刀が振るわれる音と、弱くなる悲鳴。先に進むほど強くなる狂気。

 曲がった路地の先には、月明かりの中壮絶な光景が広がっていた。

 浅葱の羽織を赤黒く染めた数名が生き絶えた死体に何度も刀を振りかざす。
 そこには、狂気に身を窶した人ではない何かが居た。


 不意に狂気の集団より手前側の家と家の隙間から、小さくとは言えない音を立てて、探し人と木の板が転がり出た。

 眞里が彼女のそばに寄ろうと駆け出すのと同時に、浅葱の集団が振り返る。
 同時に彼らの目が歓喜に染まったのを見た。

「千鶴っ!」

 名を呼ぶと同時に駆けるが、彼女はぴくりとも動かず、その視線は目の前の彼らに釘付けになっていた。

 恐怖に支配されている。

 全てが硬直している千鶴の前に飛び出すのと同時に、駆けてきた奴の刀を受け弾く。
 にやりと闘いの狂気に顔を歪ませた彼らは新たに現れた、――否、増えた獲物に顔をにやつかせる。
 月明かりに、返り血で赤黒い、狂気に染まった醜悪な顔は、亡くなった主君に見せてもらった異形のもののようで。

「千鶴! 走れ!」
「っ……あ、っ眞里っ」

 完全に腰を抜かした様子の声音に、己等と目の前の集団との距離を測る。
 不気味な笑い声をあげる数名を地に伏せるのは造作もないが、千鶴を庇いながらでは彼女を無傷にとは難しい。
 使い慣れた獲物は槍だが、市街地では向かないために手にしているのは太刀一つ。

 駆けてくる姿に腰を落とし、構え先頭に立つ一人を一閃で斬り伏せ、二人目と切り結ぶ。残る者が千鶴に向かおうとするのを素早く足蹴りにして飛ばし壁に叩きつけると目の前の相手を二合合わせ斬り伏せる。

「っ眞里!!」
「っぐ、っそらぁ!」

 蹴り飛ばした相手が背後から切りつけてくるのに避けるに間に合わず、左腕を掠る。にやりと笑う顔に虫唾が走る。素早く切り捨て、初めに倒した者が起きあがり向かってくるのに備えて構える。

 しかし予想に反して、眞里ではなく千鶴に向かっていく姿に焦るが間に合わない。
 千鶴の顔が恐怖に歪んだその瞬間。
 素早く目の前を走る浅葱の羽織が、鋭い筋で斬り伏せた。

 濃い地の香りが路地を満たすが強い風がそれらを連れ去る。

「あーあ、残念だな……」

 響いた声は、言葉とは裏腹に楽しげに弾んでいる。
 突如現れた、二人の男に刀を握る眞里の手に力が入る。
 二人の男は、先程眞里が斬り伏せた二人の男と同じ浅葱に染められた羽織を着ている。

 敵か、否か。間違いなく味方ではない。
 同士討ちに巻き込まれたのかよくわからないが、現状はよくない。

 眞里と千鶴の間を彼らに塞がれている。
 眞里は千鶴を置いて逃げはできないし、彼女は身動きが取れない。

 そして、もう一つ眞里の背後から気配がした。それは、じっとこの場の成り行きを眺めている。その視線の為、眞里は身動きが取れない。

「残りは僕ひとりで始末したゃうつもりだったのに。斉藤君、こんなときに限って仕事が速いよね」

 最後の一人を斬り伏せた方は『斉藤』というらしい。
 軽い口調の男は状況に似合わず楽しげに微笑む。斉藤と呼ばれた男は気怠げにもう一方を見る。

「俺は務めを果たすべく動いたまでだ。……あんたと違って、俺に戦闘狂の気はない」
「うわ、ひどい言い草だなぁ。まるで僕が戦闘狂みたいだ」
「……否定はしないのか」

 斉藤は呆れ混じりのため息を吐くとちらりと千鶴を見て、眞里に視線を投げかけた。

「でもさ、番狂いもいいとこだよね。さっきのまま放って置いてもこっちの子が全て終わらせてくれただろうから、僕たちの手間も省けたのかな?」
「さあな。少なくとも、その判断は俺たちが下すべきものではない」

 彼らの言動から、眞里の後ろから視線で動きを封じている者がそれに値する気がした。
 眞里はこの時代に馴染みが薄いため、全く理解が追いつかなかったが、千鶴は何かを感づいたようで息を呑む。

「まさか……」

 それと同時に背後の気配が動いた。

「……運の無い奴だ」

 漆黒の髪が靡く様は、月の光を浴びて季節外れの狂い咲きの桜のようで。千鶴は息を呑んだ。
 千鶴に突きつけられた切っ先に動こうとするが、眞里の目前にも白く光るものがあった。
 斉藤が、隙のない仕草で剣を構えている。千鶴に剣先を突きつけている漆黒の髪を持つ男の邪魔をするなと言わんばかりに。
 殺意を感じられない斉藤と目の前の光景に、眞里は剣をおろす。

 月明かりの中、漆黒の男の表情が見えたのだ。
 冷たさを孕み、非情を張り付けた面の中。漆黒の瞳が、何かの感情に揺れているのを。

「いいか、逃げるなよ。背を向ければ斬る」

 静かな宣告は、千鶴にも向けられていると同時に眞里にも向けられていた。元より眞里は千鶴を置いて逃げる心づもりなどさらさらない。

 千鶴が何度も無言で頷き、眞里が刀を納めるのを見ると、彼は眉間に深い皺を寄せて、重く深いため息を苦々しく吐き出した。同時に刀を納める。と同時に斉藤も刀を納めた。

「あれ?いいんですか、土方さん。この子たち、さっきの見ちゃったんですよ?」

 好戦的な男が不思議そうに目を細めると、土方と呼ばれた男はますます渋い顔をする。その様子から察するに渋い顔ばかり普段からしているようだ。

「……いちいち余計なことを話すんじゃねえよ。下手な話を聞かせちまうと、始末せざるを得なくなるだろうが」
「この子たちを生かしておいても、厄介なことにしかならないと思いますけどね」

 そこで言葉を切ると、彼は眞里を一瞥する。

「こっちの子は特に」

 土方と呼ばれた男は面倒そうに息を深く吐く。

「とにかく殺せばいいってもんじゃねえだろ。……こいつらの処分は帰ってから決める」
「俺は副長の判断に賛成です。先程の騒動は小さくはない。長く留まれば他の人間に見つかるかもしれない」

 斉藤は周囲を軽く見渡し、移動を進言した。ついでのように自らが斬り殺した死体と、眞里が斬り伏せた死体へと目を落とす。

「こうも血に狂うとは、実務に使える代物ではありませんね」
「……頭の痛ぇ話だ。まさか、ここまでひどいとはな」

 土方は感情の宿らない眼差しを足下に向けた。
 眞里もつられてちらりと見るが、ぐらりと視界が傾く。
 斬られた腕の止血はまだ行っていない。失血で目が眩む。あと数刻放っておけば出血多量で倒れ、先に隠れた主君の元へと行けるだろう。均衡を失いそうな体を家屋の壁に手を突いて支える。懐から手拭いを出して幹部をきつく縛る。
 傷は深くはないが浅くもない。
 そんな眞里に気づかず、土方は男二人を苛立ちを露わに睨みつけた。

「つーか、おまえら。土方とか副長とか呼んでんじゃねえよ。伏せろ」
「ええー?伏せるも何も隊服着てる時点でバレバレだと思いますけど」

 浅葱の揃いの羽織は隊服らしい。しかし、眞里にはいまいち理解ができない単語である。武田の赤揃えのようなものだろうか。取りあえず、同じ軍か。何かに属しているのだろう。そして―――。

「……死体の処理は如何様に?肉体的な異常は特に現れていないようですが」
「羽織だけ脱がせとけ。……後は、山崎君が何とかしてくれんだろ」
「御意」

 先程の狂った集団は、彼らが属する集団が隠しておきたい何からしい。
 『血に狂う』先程の表現が、それを端的に表していそうだ。

「隊士が斬り殺されてるなんて、僕たちにとっても一大事ですしね」

 くすくすと笑いながら、眞里を一瞥する。半数を斬り殺した眞里を。

「ま、後は俺らが黙ってりゃ、世間も勝手に納得してくれるだろうよ」

 土方の言葉は眞里と千鶴を圧迫した。

「ねぇ、ところでさ。助けてあげたのに、お礼の一つもないの?」
「……え?」

 唐突に千鶴が話しかけられ、目を瞬く。

「そんな、助けてあげたのにって……」

 迷い俯く千鶴に眞里はため息をついた。
 千鶴を助けたのは彼らだが、千鶴に詰め寄っている彼は厳密に言えば千鶴を助けてはいない。助けたのは眞里と、斉藤と呼ばれた男だ。

 千鶴はふらりと立ち上がると袴についた土を払い、身だしなみを整えると頭を下げた。丁寧に礼を述べる千鶴に辺りが一瞬凍り付く。

土方は苦虫をつぶしたような顔をして、斉藤は衝撃に目を見開いていた。
 そして礼を強要した彼は腹を抱えて笑っていた。千鶴が苦々しく見ると彼は笑いすぎて浮かべた涙を拭い、少しだけ背筋を正した。

「どう致しまして。僕は沖田総司と言います。礼儀正しい子は嫌いじゃないよ?」
「ご丁寧にどうも……」

 もう一度頭を下げた千鶴に、土方がまたも深く息を吐いた。

「わざわざ自己紹介してんじゃねえよ」
「副長。お気持ちはわかりますが、まず移動を」
「ああ、分かってる。……来い」

 土方が眞里の右手を掴み、ずんずんと無遠慮に足を進める為に眞里も慌てて足を動かす。
 千鶴も沖田に手を掴まれ歩き出していた。

「己のため最悪を想定しておけ。…さして良いようには転ばない」

 斉藤の言葉に千鶴が固まったのを気配で感じた。くすくすと笑う沖田の声に混じって斜め前から小さな声が聞こえた。

「……悪かったな。娘の腕に傷、付けちまって」

 掴まれた腕も、動かすのも億劫な体も斬られたためか発熱している。それが分かるのだろうか。
 ふらつく視界を感じさせぬように歩きながら、眞里は小さく礼の言葉を呟いた。


****


というわけで薄桜鬼です。
初めてまだ序章しか終わっていないのに書いてみました。

いまいち幕末が理解できていないので、現代トリップの子をどうやって絡めたがらいいのか分からなかったので、クロスオーバーという苦肉の策に打って出ました。

とりあえず
立花眞里
17歳
戦国BASARAの世界から薄桜鬼にトリップ
武田家に仕える武士の家の長女で幸村の幼なじみ

トリップ前は、信玄が病死した一年後に武田勝頼を頭に長篠合戦で織田・徳川連合軍に敗走。合戦中に幸村を庇い、爆発に巻き込まれそのままトリップ。といった感じです。
他はまた後ほど。

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舌打ちするの?

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【2010/04/15 15:19】 NAME[BlogPetのゆな] WEBLINK[URL] EDIT[〼]

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