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小ネタ日記

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BASARA チャルメラに導かれ

トリップ
デフォルト名:神崎紗英(かんざき さえ)



 きっかけはチャルメラだった。


 高校2年生の夏休み目前の夜。
 紗英はほかの高校生と同じく期末テストというものに迫られていた。

 明日がテスト初日、で苦手な英語と好きな数学と同じく好きな世界史。好きなものはばっちりなので一夜漬けで英語を詰め込んでいた。
 I can't speak English!!と無駄に叫ぶこと数度。(厳密に言えばspeak よりもunderstandだろうと律儀に教えてくれる人はいない)
 気づけばほんの少し欠けた丸に近い月は真上に昇ろうとしていて、そろそろ寝ないとテストに支障を来す時刻になっていた。紗英は日付が変わる前に寝ないとテストで熟睡してしまうからである。

 小腹が空いていて、寝られるか微妙だなぁと真剣に悩みながら片づけをしている紗英の耳に、なんとも食欲をそそる音が聞こえた。


 ちゃららーらら ちゃららららら~
 階名で言うならばシドレードシ シドレドシドー(シはフラット)

 毎度おなじみラーメン屋のチャルメラだった。
 これ幸いと、財布と携帯と英語の単語集(明日のテストで20点も出る)をポシェットに詰め込み 片手にマイ箸を握りしめると紗英はそっと台所からラーメンどんぶりを失敬して、サンダルをつっかけると外へ飛び出した。
 進行方向はチャルメラの鳴る方である。

「おじさん、一杯くださーい!」

 ゆっくりと走っていた屋台は足を止め、紗英が追いつくのを待ってくれた。


「お嬢ちゃんは、久しぶりだねぇ」
「へへへ。テストの度にお世話になっています」

 どんぶりを手渡して顔なじみの旦那にへらりと笑う。
 テスト期間の夜食に重宝している屋台ラーメンなのでお互いに名前は知らないが顔見知りである。

「豚骨でいいかい?」
「お願いしまーす」

 というよりもこのラーメン屋は豚骨しか置いていないのだが。
 どんぶりに盛られている間だけでもと英単語を見るが、気も漫ろなためあまり集中できずにすぐに閉じてしまった。

「はい、チャーシューサービスしといたよ」
「わー! いいんですか? ありがとうございまーす!!」

 お代を置くと、柔らかな笑顔で「勉強頑張ってね」と言われ紗英は満面の笑みでラーメンをこぼさないように気をつけながら頷いた。



 このラーメンを食べることができるのがそれが最後だとは紗英は知る由もなかったが、後々もっと食べておけばよかったと悔やむのである。




 ラーメンを食べたら歯を磨いて水を飲んで寝よう。
 そう決めながら紗英は自宅の玄関口と足を踏み入れた。
 零れそうになるスープを見ながら玄関のドアノブを回そうと手を伸ばした瞬間。

 世界が一瞬真っ暗に染まった。

「う……え?」

 目の前は新興住宅の玄関口ではなく、準和風な庭に面した縁側と呼ばれる簀の子板がせり出したやはり準和風な建物。

「……ここ、どこ?」


 全く見知らぬ場所にいた。
 慌てる気持ちを抑え、ゆっくりと目を閉じた。手にはずっしりとしたラーメンの重み、食欲をそそる豚骨の匂い。


 暗闇の世界で、静かな風と趣き深い虫の鳴き声が紗英を包みこむ。

「……とりあえずラーメン食べよっかな」

 麺が伸びてしまえば折角のおいしいラーメンもおいしさが半減である。そう心の内で叫ぶと、

「夜分におじゃましまーす…」

 小さく呟いて縁側に腰掛けた。気づいた時点で庭の真ん中にいたので今更お邪魔するも何もないのだがそこは気分である。

「うーん…おいしい…」

 ラーメンをすすりながら辺りを見渡す。
 見事な松やら色々(紗英には松しかわからなかった)が調和をとって生えており、地面は芝生ではなくて砂利をならしてあるものであった。道理で足下で音がするわけである。

 空気がとても澄んでいて、夜空は星がよく見えた。

 家から見上げた空はこんなに綺麗だったろうか。ぼんやりとそう思った紗英の耳に床板を踏みしめる音が聞こえてきた。


「こんな夜更けに誰じゃ?」
「っ!」

 背後から聞こえた低い笑い混じりの声に驚き、紗英は噎せた。

「えっあえーとそのっわたっ私!怪しいものじゃないです!」

 とっさに叫ぶが自分でも十分怪しい人間だと紗英は思う。
 夜に、他人の家の縁側で豚骨ラーメンを食べていたらよくて注意のみで、最悪補導だろう。

 顔から血の気が引いていくのを自分で感じなら紗英はラーメンのどんぶりと箸を握りしめたまま突然現れた人間と向き直った。……そしてすぐに後悔した。


 月明かりでわかるほどの今まで出会ったことのないほどがっしりとした体格に、月明かりがまぶしいスキンヘッド。表情はよくわからないし初対面だから伺えないが、友好的ではないとわかる空気。

 こんな事態に陥ったことのなかった紗英は当たり前のごとくパニックを起こした。けれど、両手はラーメンと箸を持ったまま揺らがず、夜分だから小声であるという部分から頭の片隅はどこか冷静だった。

「試験勉強中にお腹が空いたのでラーメンを買って食べようと思ったら知らない家にいてでも麺が伸びたら美味しくないからとりあえずラーメンだけでも食べようと思ったので、不法侵入してしまったんですけど縁側を貸していただけませんか?」
「……うむ。香ばしいなんとも空きっ腹にそそる香りよ」

 自分でも何を言ったかわからないが、確かにお腹が空く。人前でそんな場合ではないとわかっているのにとりあえず一口すする。


 と視線を感じた。

「……食べられますか?」

 しまった!この場合は『召し上がりますか?』だ!
 高校生らしく、正しく敬語を使わなくてはいけないのに!と紗英は心の内で叫んだ。もう何がなんだかわからない。

 そんな言葉遣いは気にしないのか目の前の大男はにっかり笑うと(そう見えた)


「すまないが馳走になろうかの」
「どどどどどうぞ。た、食べかけで申し訳ないですが」
「うむ。箸は借りてもよいか?」
「はい!割り箸じゃないのでささくれは大丈夫です」
「わりばし?まあ、頂戴しよう」

 慎重にラーメンどんぶりを渡し、受け取ったのを確認するとマイ箸を渡した。

「ほう。うどんともそばとも違うのう」
「?豚骨ラーメンですよ」

 今の時代でラーメンを知らない人が居るとは珍しい。なんとも不思議に大男を眺め紗英は、ようやく落ち着きを取り戻してきた頭を働かせ始めた。


 とりあえずここどこ?


「うむ。食したことのない味であったが真美味であった。とんこつらぁめんと言ったか?」
「はい」
「そなたが作ったのかな?」
「いいえ。馴染みの屋台のおじさんの懇親の力作です!麺のこしとスープの濃厚さとあっさりさが最高なんです!」
「うむ…?汁の味が素晴らしかったのう。麺がのびる前にそなたも食べなさい」

 目の前に置かれていたラーメンを手に取り再び食べる。確かに麺がのびる寸前だ。

 スープを呑みきると、お箸を置いて両手を合わせた。

「ごちそうさまでした」
「うむ。馳走になった。して、そなたどのようにして入って参った?」

 気づくと縁側に並んで腰掛けた男は姿勢良く、さっきとは打って変わって友好的な雰囲気になっていた。おかげで紗英はまたパニックを起こすことなく、言葉を紡げた。

「えと、自宅のドアをあけようと思ったら何故かそこに立っていました」

 ラーメンを持ったまま。
 そこ、と指さした場所を見て紗英も男も黙り込んでしまった。

 あの視界が真っ暗に染まった瞬間に無意識に歩き回ったとしても、どうしてこんな場所にいるのだろう。勉強のしすぎで疲れているのだろうか。


「この屋敷の周りにはあまり長屋はなかった筈だがのう」
「えっ。自宅はふつうの新興住宅地の中の一つですけど…」

 この男の口振りでは住宅街は遠いようだった。

「ふむ。……まあよいわ。このような時刻にそなた一人外に出すのもならん。今宵はこの屋敷に泊まっていきなさい」
「えっでも明日はテストが……」
「まあそう言うな。佐助よ」

 何かが風を切る音がした。と思った瞬間に男の背後に誰かが立っていた。

「はいはいっと。離れに用意しておきましたよ」
「うむ。このものに案内させるについてゆきなさい。おお、そういえばそなたの名前を聞いておらなんだ」

 突然の事態に何がなんだかわからないが、慌てて頭を下げて。

「神崎紗英といいます。高校2年生です」
「うむ。儂は武田信玄よ。詳しい話は朝に聞く故今宵はもう休むとよかろう」
「じゃあ、行こうか、紗英ちゃん。だったっけ?あ、俺様は猿飛佐助ね」
「え、あ、はい」
「では失礼しますっと」
「うむ」

 腕を取られ肩を押され強引に感じない程度に強引に連れていく男は、姿はよく見えないがとりあえず長身だった。そして足音がしない。



「じゃあ、とりあえず今はもう寝てていいよ。朝餉になったら起こしにくるからね~」

 通された部屋には蝋燭の光が揺らめき、ほのかに室内を照らしていた。
 8畳ほどの部屋の真ん中に布団が敷いてあり、その上に一枚の白い浴衣に似たものが置いてあった。

 あれは寝間着だろうか。

「えと。はい、すみません…」
「うん?」

 部屋を立ち去りかけていた佐助は立ち止まると振り向いた。蝋燭の光に照らされてようやくその顔が見れたのだが、頬とは何不思議なペイントがしてあり、着ている服も迷彩柄でつっこむべきところがたくさんあったがとりあえず。

「その…ありがとうございます。それとおやすみなさい」
「………ん。おやすみ~」

 彼が襖を閉めると部屋は完全に閉ざされた。

 とりあえず布団の横に腰を下ろし、ポシェットとどんぶりと箸を置く。無意識のうちに持ってきていたようだった。

 ポシェットから携帯を取り出し、画面を開くとそこには『圏外』の文字。

「どこの田舎だここは」

 さすがに家の近所はどこも繋がったはずだが。と思いながら、寝間着っぽい浴衣を着て傍らに服を畳んでおくと布団に潜り込む。そしてポシェットから英単語帳を引っ張りだして、勉強しようとしたが、蝋燭の光ではあまり読めなくて、すぐにあきらめて閉じた。

 服の傍に単語帳も置くと、そっと目を閉じた。



 そういえばさっきのおじさんの名前聞いたことあるかもしれない。


 微睡む意識の中ぼんやりと思うと、紗英は眠りについた。




 程なくして寝息が聞こえる部屋に誰かがそっと入り込み、つけたままになっていた蝋燭の火を吹き消した。





「気持ちいいくらい寝てますよ」
「そうか」
「にしても大将も得体の知れないものを食べないで下さいよ」
「はっはっは! 真美味であったぞ!」
「そういう問題じゃないってわかってますよね?」
「無論じゃ。だがのう佐助よ、儂は紗英にそういったものを感じなかったのじゃよ」
「……とりあえず朝になるまでに調べときますよ」

 そう呟くと忍びの姿は屋敷から消えていた。





**

書いていて思ったんですけど、上杉でもよかったかも?
さーて、どうなるかな?

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