心の琴線に触れるその旋律。
風に乗って届くや柔らかなメロディーに耳にしたモノはぼんやりと脳裏に思い思いのものを想い描いた。
たとえば其れは故郷であり、昔馴染みであり、両親であり、親友であり、いつか食べた美味しいものであった。
そんなふうに何かを思い起こさせる旋律は町の外れから聞こえていた。
いつものように気まぐれに取り出した横笛を思うままに奏でるアトラス。
その音色は「あくまで趣味」と言い切るには、色がこもっていて尚且つ切ない旋律だった。
町の外れで奏でていたアトラスの前にはロイドを筆頭にコレットやジーニアス、クラトスやしいながいた。各々の好きな格好で聞いていた。
「なーアトラス」
「なんだい、ロイド」
もう吹くつもりはないのか横笛の手入れを始めたアトラスの前ににじりよったロイドはにっと歯を見せて笑った。
「笛吹いてるときって何考えて吹いてるんだ?」
ぴたりとアトラスの手が止まった。そのことに反応したのはクラトスだけで、彼は横目でアトラスを一瞥すると、また元の体勢に戻った。
「なぁなぁ、何考えながら吹いてんだ?」
「“何を考えて吹いてるか”か……。難しい質問だね」
「そ、そうか?」
きょとんとするロイドに苦笑してみせると彼はなにやら考え込み始めた。だがロイドには構わずにアトラスは膝に乗せた横笛をそっと指で撫でた。
「“何を”か……。敢えて言うなら、楽しかった思い出…かな」
「どんなことですか?」
アトラスの隣に腰掛けて聞いていたコレットが身を乗り出してきた。先ほどからうずうずしていたのでタイミングを図っていたのだろう。
「そうだね、私は……」
空を見上げるとアトラスは目を細めたまま虚空を見つめていた。
脳裏に思い浮かべる長い年月の思い出。
悲しいことも辛いことも厭なことも、憎らしいこともあったけれどそれと同じ数だけ。とまではいかなくとも楽しいこともたくさんあった。しかし、アトラスの脳裏に浮かんだのはもっと単純なことだった。
「楽しい思い出、ではないけど初めて『世界』を見たときかな」
「『世界』?」
「そう『世界』。家を飛び出したときに見た、広い荒野。遠くまで続いてる曇り空。雲の隙間から太陽が射し込んだあの瞬間」
決して美しいとは言えない景色ではあったけれど。深く胸を打つものがあった。
「あの景色を見た瞬間に思ったことを想いながら笛を吹いたりもする。かな」
「ならいつもそのことを考えてる訳じゃないんだな」
「そうだね。何も考えてないときもあるし、怒りながらのときもある」
とりあえず納得はしたらしいロイドを見て、(あまり答えにはなっていないけど)と思ったが質問した人間が納得しているからまあいいか。と思ったアトラスは笛を布に包んだ。
(不思議な言葉でいくつかのお題2)
ロイドとルークがごっちゃになる…!!
そしてクラトスたちが居る意味が分からない。
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