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小ネタ日記

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薄桜鬼14

デフォルト名:立花眞里


 先行く斉藤の後ろを追いかけて廊下を歩く。一定距離まで追いついた途端に彼は足を止め、眞里を振り返った。

「斉藤殿?」
「支度が出来次第玄関で落ち合おう」

 支度も何も眞里にはないのだが、斉藤にはあるのだろうと思い静かに頷き、目の前に来ていた眞里と千鶴の部屋へと足を踏み入れる。
 斉藤が立ち去るのを足音で確認して、部屋の中を見回す。
 腰に下げるべき刀は既に下げているし、特に突出して持ち歩くべきものは見あたらない。

 外出するなら多少の金子を持って行くべきだろうが生憎と眞里には持ち合わせがない。
 副長補佐の返礼に渡すと言われたが、眞里や千鶴の替えの着物代にあててもらった為に無一文である。

 暫し考えるも何も思いつかなかった為に手拭いを確認して軽く身だしなみを整え直すと、玄関へと足を向けた。





 草履を突っかけたまま腰を下ろして斉藤を待っていると、原田と永倉が眞里を見つけたらしく大声で名を呼びながら傍らまでやってきた。

「おう、どっか行くのか?」
「外出禁止解けたのか?」

 矢継ぎ早の質問に気圧されて思わず口を噤むが、間が空き答えを求める視線に土方に千鶴と呼び出されたことを先に伝える。合点がいったのか原田と永倉は頷き合う。

「千鶴は一番組の巡察に同行して、私は非番の幹部の方とということで外出許可が下りました」
「なにっ!? 俺らも今日は非番だぜ?」
「……あー、もしかして」

 思い当たる節があるのか原田が頬を掻くと、彼らの後ろから斉藤が姿を表す。音もなく現れた斉藤に驚く原田と永倉を気にも止めずに草履を履くと眞里に向き直った。
 一見したところ、斉藤も何も変わっていないが部屋から何かを持ってきたのだろう。
 眞里が頷き返し立ち上がるとその肩を永倉と原田が掴み押し留める。

「もしかして斉藤と出掛けるのか」
「二人で逢い引きとはずりいぞ!!」

 振り払おうと思えば振り払える二人をどうしたものかと考え、斉藤に目配せすると彼は表情が薄いまま眞里の肩にしがみつく同僚を眺める。その静かな双眸には呆れが混ざって見えるのは気のせいではないだろう。

「非番の幹部に声をかけたが皆用事があると言われたと副長が言っていたが。用があるのだろう?」
「うっ……」
「……やっぱ、あれってそう言うことだったんだな」
「あれ、とは?」

 原田は罰が悪そうな顔をして、昨晩土方から今日の非番の予定を聞かれたことを話す。永倉も重ねるように、非番に仕事を言われるのかと思ったから用事があることにした、と溜め息混じりに白状する。

「まさかあんたとの逢い引きの権利がかかってるとは思わなかったな。ま、次の非番の日に楽しみに待つか!」
「そうだな、じゃあ斉藤。任せたぞ」

 原田と永倉に見送られ屯所を出発する眞里は一度振り返り二人の姿に一礼すると先を行く斉藤に追いつき疑問を口にした。

「外出されたいなら私を伴わずともよいのでは?」
「……そういった意味ではないだろうが……」

 ちらりと斉藤の視線を受けて、首を傾げる眞里の仕草を見て何かを理解したかのように頷き納得するとそのまま足を進むめる。続いて斜め後ろを追いかける眞里は、斉藤の口元がゆるりと笑みを浮かべていることには気づかなかった。
 隣に並んだ眞里へと一瞥した斉藤は既に表情を消していて、事務的な口調で眞里を呼んだ。

「あんたの外出では巡察では廻らない地区での聞き込みが主となる」
「それは何となくは予想済みです。京の地理には明るくないので道順は斉藤殿にお任せしても?」
「問題ない。何かあればすぐにオレに言え」

 小さく頷くと、斉藤はこちらだ。と囁くように告げると、巡察路では含まれない方へと足を向けた。
 つれたって歩く二人の姿が見えなくなった頃、一番組が千鶴を連れて屯所を発った。




 京の町に来るのは何度目になるだろうか。そんなことを考えながら眞里は茶屋から見える京の光景に昔を思った。

 陽が傾く前には屯所に戻らなければならなかったが、歩き回ったが大きな手掛かりは得られず。屯所に戻るかと踵を返した斉藤が立ち寄ったのは茶屋であった。
 持ち合わせがないと固辞する眞里を気にすることなく腰を掛けた斉藤は、二人分の茶と団子を頼むと先に出された茶を飲み一人人心地ついていた。
 頼まれた以上立っているわけにもいかずに眞里もまた腰掛けて人心地つける。

 京に来たその日に新選組に連れて行かれた為に、町並みをのんびりと眺めるのは初めてだった。

 以前に来たのは、まだ信玄公も存命の頃、幸村とやんちゃばかりしていた頃だ。
 見聞を広めてこいと、得物と僅かばかりの金子を手に幸村と共に武田を放り出された。その時に京を訪れたのだった。
 友を思いだし、眞里は思わず柔らかい表情が浮かぶ。お付きにと猿飛佐助と霧隠才蔵がついていたが、まさに珍道中というに相応しい見聞の旅だった。
 その時に訪れた京も、この様に暑い日が続く夏で、前田慶次が率いる京の人々が祭の夜を盛り上げていた。京の思い出は賑やかで疲れた記憶で埋もれている。何と勿体ないことだろうと苦笑が浮かぶ。

 ふと、視線を感じて意識を戻すと斉藤が眞里をじっと観察していた。

「斉藤殿?」
「何か不審なことでもあったか」

 何故、と尋ねると心此処に在らずといったように見受けられた、と答えが返ってくる。眞里が昔を思い起こしていたのを観察されていたようだった。
 またもじっと見てくる斉藤に否定の意を示すために緩く首を振る。

「町が賑わっているような気がしたので、昔見た祭を思い出しました」
「……確か祇園祭が近かった筈だ」
「祇園祭……?」

 なるほど、と眞里は納得して道行く人々を眺める。
 時代や世界が違っても、その時を生きる人々はやはり同じ人なのだと実感する。江戸にいた一年でも感じたことだが、訪れたことのある場所では殊更その実感は強くなる。

「甘い物は好きだったな」
「はい」

 確認の言葉に素直に頷く。此処最近は非番の幹部がよく土産と称して団子や甘味物を買ってくる。
 千鶴も眞里も好きなので素直に受け取っているが、あまりにもよく渡される。決して安い物ではないのもよく渡される為、余計なお世話だが彼らの懐が心配になる。

 斉藤は二人前の団子を目の前に置くと自分のを手に取り、皿ごと眞里の傍へと寄せる。
 短く礼を言い眞里も団子を手に取る。


 その後まったりと団子を堪能して屯所に戻った二人を待ち受けていたのは、長州間者捕縛。という大事だった。

 広間で幹部は待機と声を掛けられ、眞里も共にと言われそのまま斉藤と広間へと向かう。
 広間の襖を開けると、そこには土方以外の幹部や一部の監察方が揃い、沖田と千鶴は並んで山南から説教を受けているようだった。
 襖を開けたことで、室内の視線を集めるが斉藤も眞里も気にすることなく足を踏み入れる。どこに腰を下ろすか迷うが、斉藤が沖田の後ろに座った為、眞里も千鶴の後ろに腰を下ろす。
 途端、千鶴が顔を歪めて眞里を振り返る。

「眞里さんっ」
「千鶴、ただいま」
「おかえりなさい! 聞いて下さい、私……」

 悲壮感さえ漂う千鶴の説明を受けると眞里はお疲れさま、と妹分の頭を撫でる。

 千鶴は一番組の巡察に同行し、父親である雪村綱道の行方の聞き込みをしていた。何人かに尋ねた時、桝屋という店でそれらしき人を見たことがあると言われた。やっと見つけた手掛かりに喜ぶのも束の間、傍で一番組と浪士達との斬り合いが始まり沖田の傍を離れてしまう。
 裏道に入り、騒ぎが落ち着くのを待とうと思ったところで側にあった店主から中で待たないかと声を掛けられたところ、店内の客に新選組の沖田と共に居たと叫ばれた。結果、店内の客が逃げ出し大騒ぎになってしまった。そこへ沖田達が店内に乗り込み大捕り物が始まってしまった。
 桝屋からは大量の武器が発見され、桝屋の主人桝屋喜右衛門は長州の間者である古高俊太郎でありその場で捕縛された。

 千鶴の説明から要領を得たのか斉藤は暫し考え込むと確認を取るように山南を見つめる。

「……桝屋というと、泳がせていた?」
「ええ」

 肯定の答えに、また暫し考え込む。誰も発言しなくなった為に訪れた沈黙に堪えかねたのか千鶴があの、と小さな声をあげる。

「私が悪いんです……」
「君への監督不行き届きは、誰の責任ですか? 一番組組長が監視対象を見失うなど……。全く、情けないこともあったものですね?」

 千鶴の弁明は山南の冷えた視線と正論で真っ向から潰された。一瞬の鋭い眼光に千鶴は俯くが、反対に沖田は苦々しい顔で腕を袖に入れている。
 永倉も鋭い視線で沖田を見ているが、他の者達は一転苦笑いに近い表情である。

 運がなかった。その言葉で片づけてしまいたくなるような出来事だったらしい。


 しかし、山南の辛辣な物言いは若干刺々しすぎる。
 大坂での負傷以来、見かけは穏やかな物言いだった山南は厳しさや荒々しさが目立つようになった。

 片腕でも器用に生活していた眞里を何度か尋ねてきていたが、半年程度の月日で眞里の様に器用に振る舞えるはずもなく。力に成れず申し訳なく思っている眞里だったが、この様な物言いを真っ正面から聞くと眉を寄せたくなる。

 その時、廊下に足音が響き静かに襖が開かれ土方が姿を現した。吹き込んだ風に乗って漂う微かな血の臭いに眞里は目を伏せる。

「外出を許可したのは俺だ。こいつらばかり責めないでやってくれ」

 怒りも焦りもなく、穏やかな声に山南は苦笑を浮かべたが、苦言を飲み込み口を閉ざした。
 土方が上方に座るのを待ち、一瞬の静けさが広間の空気を変えた。

「土方さんが来たってことは、古高の拷問も終わったんですか?」

 原田の言葉に土方は平静そのままの表情で頷く。

「風の強い日を選んで京の都に火を放ち、あわよくば天皇を長州へ連れ出す――それが、奴らの目的だ」

 静かな凛とした声が広間に響いた。


***

いったん切ります。
斉藤さんとデート!!
団子を食べて思い出すのは、幸村との思い出。

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