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小ネタ日記

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薄桜鬼25

デフォルト立花眞里


 元治元年八月。
 新選組隊士の新規募集の為藤堂が江戸へ上ることとなった。
 江戸、雪村邸周辺の地図を藤堂に渡し、千鶴と眞里は彼を見送った。一月後には近藤も江戸へと向かう。

 幹部の中で一番年が近く、千鶴にはいつも笑顔でいた藤堂の姿が見えなくなるだけで千鶴の笑顔の回数が減っていることに眞里は気づいていたが特に言及はせずにいた。



 そんな夏が過ぎていく日。
 稽古場で原田と仕合っていた眞里を山南が呼び止める。
 原田の木刀を押し返し、眞里は原田に一言断ると山南の下へと足を向ける。

 腕の怪我を期にめっきり稽古場に顔を出さなくなった山南を一般隊士たちは敬遠していた。人当たりの良さはなりを潜め、厳しい物言いになっている為幹部以外の反応は仕方がないといえるものであった。
 そんな彼が師範代を呼び止めるのを見て隊士たちは何事かと意識を二人へと向けた。

「立花君は片腕でも刀を握るのは支障はないと言っていましたが……」
「はい」
「どのようにして鍛えていたのかもう一度お聞きしても?」

 眞里は珍しく困ったように言葉に詰まった。何故なら以前にも山南本人や、土方や近藤等からも尋ねられた内容であり、彼らの反応を見る限り参考には到底ならないことが分かっているためである。

「山南殿、私の答えは以前と変わりません」
「……そうでしたね、すみません。稽古を続けていただいて結構です」

 苦笑を浮かべて山南は背中を向けた。その背中が見えなくなった頃合いに稽古場に休憩を言い渡した原田が眞里の隣に並ぶ。彼の物言いたげな視線を受けて、眞里は縁側へと原田を促した。


「簡単に言ってしまえば、片腕を両腕並の力を使えるように鍛えればいいだけの話なのですが……」

 山南に答えなかった内容を聞きたがった原田に眞里は苦笑混じりに答える。
 眞里が鍛えてきた年月と彼らは大差はない。しかし、経験や内容が異なる。

 眞里は武将であり、戦場を駆け抜けていた。刀と槍を同時に扱うためにはそれ相応の努力を惜しまなかったし、いかな状況でも生き残れるようにすべを身につけてきた。

「それにしても、眞里はいつから刀握ってきたんだ?」
「……物心つく前からですね」

 武田の御為に。その言葉の通り真っ直ぐ突き進んだ十数年。それ以外の生き方は知らない。

 原田は眉を少し寄せると眞里をじっくりと眺めた。
 千鶴と違い、男装は板についている。刀も槍も負けなしである。洞察力も優れ、指導力もある。加えて、炊事もこなせるという器用さを垣間見せられる眞里の生い立ちは謎に包まれていた。

 原田の視線に眞里は、話そうか話すまいかを逡巡し、周囲の気配を探る。誰もいないことを確認すると、原田殿。と声をかける。

「……荒唐無稽な話と思われるかもしれません。どう思われても私は気にしませんが、話を聞いていただけますか?」
「お前のその強さの秘密ってぇことなら知りたいけどな。でもよ、土方さんや近藤さんは信用したんだろ? なら、俺も信じるさ」

 目を瞬くも、すぐに甘やかな笑みを浮かべた原田の言葉に眞里は面食らう。しかし、どこか気が抜けたように表情を弛めると、静かに話し出した。


「私は今の世よりも数百年も昔、戦国の世で武将として生きて参りました」

 武田に仕える立花家の末娘であると同時に嫡子として育てられ、一軍を任せられる武将とまでなれたこと。真田幸村と共に、切磋琢磨し合い戦場を駆け抜けたこと。

 信玄が亡くなり、坂道を転げ落ちる武田の行く末を嘆き参戦した長篠合戦での出来事。

 淡々と語り、話し終えた眞里はゆっくりと原田に視線を向けた。
 彼は、言葉をなくしてその場にいた。眞里はその反応を気にすることなく続ける。

「目を覚ますと千鶴が泣きそうな顔で微笑んでいました。……私は火傷の重病人でかつぎ込まれたそうです」
「……火傷?」

 視線が自分を捉えたのを感じ、眞里は袖を捲る。怪我の治りが早いため大きな跡は残っていないが、うっすらと名残は見える。彼が息をのむのを感じて、お目汚し失礼しました、と非礼を詫びて袖を戻す。

「……なるほどな。眞里が強ぇ訳がはっきりした。戦国の武将なら、場数は俺らよりも上だな」
「はい。初陣は十四でしたし」
「…………一つ、聞いてもいいか?」

 眞里は小さく頷く。原田は若干躊躇うように言葉にならない何かを呟くが、やがて小さく咳払いした。

「女として生きていきたいと、思ったことはなかったのか?」

 眞里が予想していたのとは全く違う言葉に、返答をなくした。思わず反芻するように、同じ言葉を呟く。

「女として……ですか」
「ああ。武将として生きてきたのは成り行きだろ? 綺麗なべべ着て、嫁いで子供生むってことをしたいとは思わなかったのか?」

 即座に首を横に振る。

 確かに眞里の年頃の娘は嫁に行き、女としての道を進む。姉たちもそうであった。しかし、眞里は武将としての自分しか知らない。友たちと戦場を駆け抜け、拳を合わせ。

「武田の……御館様の御為に、私はそう思い成し遂げるために槍や刀を手にしてきました。武将の幸せは知れども、女子(おなご)の幸せなど考えたこともありません。嫁がれた姉上方を見ても自分がそのような生き方をするというのも想像できませんでしたし……」
「そうか……。悪かったな、変なこと聞いてよ」
「いえ……、私も長い話をおつきあいくださりありがとう御座いました」

 ふ、と微笑する眞里を眺めると原田は照れ臭そうに頬をかく。廊下の奥から呼ばれる声を聞くと眞里は立ち上がり、一礼すると背を向けてその場を立ち去った。

 細い背中が消えるのを見て原田は深くため息をついた。


「……そうか。俺らよりも腕がたつはずだよな」


**

伊東さんを入れようか悩んだあげくワンクッション

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