※本館の日記に一時期アップされていたものです。ちょっと加筆。
敦盛の新曲聴いたら書きたくなりました。ということで突発敦盛夢『虹の向こうに』
軽くダイジェストっぽく
デフォルト名:春日綾音(かすがあやね)
望美の一つ年下の妹
取り柄があるとすれば中学から続けている弓道と家事手伝い
白い光に巻き込まれてたどり着いたのは全く知らない場所。 必死に辺りを探すと、己と同じ桃色の髪を持つ、血を分けた姉が剣を持ち、ゾンビといえるものと対峙していた。
「お姉ちゃん!!」
「綾音?!」
不思議な言葉を唱えて白い光を放った姉は、見たこともない強さを秘めた眼差しで。その立ち姿は凛としていた。
姉は“白龍の神子”と呼ばれた。
幼なじみは姉を守る“八葉”と呼ばれ、平安末期の時代に活躍した有名人たちと行動を共にすることに。
じゃあ自分は何のために呼ばれたのだろうか。
巻き込まれただけ?
迷いは心を曇らせ、疑心暗鬼にかられ、弓の軌道を揺るがす。
広大な自然に包まれた地に赴いてもそれは晴れることなく。
そんなとき、新たに加わった八葉が真剣な顔で綾音の言葉に応えた。。
「貴女は、貴女としてそこにいる。それだけではいけないのだろうか」
その一言が、心を軽くさせた。
「私は、綾音殿とこうして見えることのできる今を感謝したい」
「でも敦盛さん、私はお姉ちゃんの妹と言うだけで、白龍にはなにも関係ないんだよ。怨霊の声も聞けないし、浄化もできない。戦いの時は弓を射かけるしかできないし何の役にも立てない」
何度願ったことか。
少しでも姉の負担を減らせればと。
今までにないほど努力しても、願っても自分だけは『部外者』で。
「それを言うのならば、私も“人成らざるもの”だ」
「でも敦盛さんは、お姉ちゃんを守るために八葉としているんだよ。そんな風に言わないで」
「それならば私も。貴女の存在は私……いや、神子にとって救いとなっている。貴女自身を否定することは神子や譲、将臣殿を否定することだ」
嘘偽りない言葉を告げるその薄紫の瞳は澄んでいて、心が美しいことを如実に表していた。
「ありがとう敦盛さん」
「いや、その……。綾音殿は笑っておられた方が、私は、皆は嬉しい」
いつからだろう。淡い微笑みを見ると心が温かくなったのは。
「敦盛さん! 見てみて!」
「…美しく色づいた紅葉だ」
いつからだろう。冷たい手を、自分が暖めてあげられたらと思い始めたのは。
「綾音殿」
「なーに敦盛さん」
その落ち着いた声で呼ばれることが好きになったのは、いつだろう。
彼らが一番に守るべき人は姉なのだと、絶望に近い悲しみを覚えたのはいつだろう。
「あら、とても惹かれる資質を持ったお嬢さんですわね。……喰べてしまいたいわ」
「っく、そんなことはさせない!!」
お願い消えないで。
祈るが誰にも聞いてもらえずにただ声が枯れるばかり。希う度に何かを失っていく気がした。
「私は汚れた身。貴女を触れることはできない」
誰よりも澄んだ心を持っていることを知ってるのに。
「勾玉がなければ、渇きが癒えない。なによりもあなたを、私が害してしまうから……」
だから、私に触れないで。
重ねた手のひらはまるで水面に合わせたようで、危うい均衡を保っていたのに。
「っ……近寄っては、いけない……っ。あなたを、傷つけたくないっ」
「極(きわ)めて汚(きたなき)も滞(たまり)無れば穢(きたなき)はあらじ内外(うちと)の玉垣(たまがき)清淨(きよくきよし)と申す。お願い、敦盛さんが苦しいのなら一緒に居たいの!!」
言霊は力を持たず、ただ音となって消えゆく。
「やだ……いやだよ……。行かないでよ敦盛さん……っ」
追いかける紫苑の裾は指に絡まることなくすり抜けていく。
「叶うのならば、綾音殿の世界で虹の梺に行ってみたかった」
「ならっ」
「けれどこれが私が神子の八葉に選ばれた訳なのだろう」
泣かないでくれ。
優しい言葉は、頬に伝う滴を拭う。
必死に伸ばす手は彼には届かなくて。
けれど。そうして彼は、月明かりのような笑顔を浮かべた。
「貴女に出会うために八葉に選ばれたのだと、思ってもいいのだろうか」
「敦盛さん! 敦盛さん!!!」
私もこの世界に呼ばれたのは、あなたに会うためだと思ってもいいですか。
「綾音殿、私は……あなたが」
「やだ、行かないで!!敦盛さん、いっちゃやだ!!」
光の中に消える彼の笑顔を見た。
狭い青空に、雨上がりの虹が目一杯橋を伸ばして。
授業終了のチャイムを聞きながら、虹の向こうに思いを馳せる。
虹の下に宝があるというのならば。
「…敦盛さん……?」
「綾音殿、虹がかかっている。共に行かないか?」
あなたにもう一度会えますか?
**
書きたい箇所だけ詰め込みました。満足です。
昔はこういう話を書くつもりはさらさらなかったのに、最近は楽しいです。
[0回]
PR