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小ネタ日記

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遙か4 アシュヴィン夢

デフォルト名:朔夜(さくや)
忍人と一ノ姫と同じ年
中つ国の女王(千尋母)の妹の一人娘。傍系王族。
黒髪に青みがかった灰色の瞳。
春に生まれたため春ノ姫と呼ばれる。鬼道使い。


※ガッツリネタバレになる可能性ありです。








 深い闇の帳が降りた頃、朔夜は突然の訪問者に戸惑いを隠せなかった。訪問者にというよりは、訪問者の告げた言葉にではあるが。


「今、何と仰いました……?」
「前から言っていた暗き未来(さき)を変えるために出掛けます。でも、あなたは連れていきません」

 ぬばたまをはめ込んだようにつやつやと光る双眸を緩めることなく、朔夜の仕える主――一ノ姫は言った。
 だが、たとえ主とはいえ聞けないものは聞けない。


「何故ですか?!柊と羽張彦はお連れになるのでしょう!何故、姫の従者でもある私をお連れ下さらないのですか?!」

 この世に生を受けたときから、朔夜は中つ国の姫の為に生きてきた。王家の傍流に肩を並べるものとして陰で支え、助けるため。
 そんな朔夜を、今から運命に立ち向かいにいく一ノ姫はつれては行かないと言う。
 悔しさと悲しさで朔夜は奥歯を噛みしめた。

「ごめんなさい、朔夜。でも、あなたまで連れていってしまうと二ノ姫には風早しかいなくなってしまう。あの子を、助けてあげて欲しいの」

 黄金の髪と蒼眼を寂しげに揺らす、二ノ姫が思い浮かぶ。
 龍の声が聞こえぬと、偽りなく言った二番目の異形の姫。

 親しげに朔夜の名を呼びかけてくる姫を思い、朔夜は顔を俯かせた。
 堅く握りしめられた彼女の手を掬いとると、一ノ姫は額をつけ合いそっと目を伏せた。

「お願い。あなたにわがままばかり言ってきた私の最期のわがままです」
「姫様…」
「私が帰ってこれなければ、二ノ姫は渦中に飲まれます。どうか、それを助けてあげて。あなたならできると信じているから」

 この姫の斜め後ろで己は生涯を終えるのだろうとずっと思っていた。
 だがそれは叶わぬ未来だと目の前の姫は告げる。
 規定伝承は覆せないのか。

 じっと見つめてくる瞳に逆らえる己を朔夜は持っていなかった。

「…っ……拝命、仕りました。お気をつけて、いってらっしゃいませ」
「ありがとう、朔夜」

 今までありがとう。それと、ごめんなさい。


 今までに見たことがないほど優しく微笑み、一ノ姫は橿原宮を去った。その背中を見送れないことに朔夜は絶望を覚え、部屋で嗚咽をこらえていた。


 何度陽が沈み、昇っても、三人は戻ってはこなかった。




 そして、怒号と共に橿原宮は常世の軍勢に急襲された。
 中つ国が誇る四道将軍は早々に保身に走り、守りは何もないに等しく、中つ国を統べる巫たる女王は常世の将軍の手に掛かり息絶えた。他の王族たる者達も次々と常世の手に掛かった。

 火の周りが早く、視界が炎と煙で遮られながらも朔夜は宮の中を走り回っていた。黄金色の髪を持つ、最後の姫を。


「二ノ姫?! 二ノ姫はどこに?!」
「姫様、危のうございます!ここは私たちにお任せ下さいまして早くお逃げ下さい!」
「いいからあなた達は逃げなさい!! 宮と共に殉じるのは許しません! っ風早!!」

 二ノ姫付きの青年を見つけると、朔夜は縋りつくように彼の白と蒼の衣の裾を握った。

「二ノ姫を安全なところまでお連れして。あなたなら姫を守り抜いてくれる」
「ですが春ノ姫はどうなさるのですか?」
「わたしにはわたしのすべきことがあります。さあ、早く」

 近くで柱が崩れ落ちる音がする。
 走り抜けていく女官と風早を見送り、朔夜は残された人がいないかを炎の中走り回り見た。

 残っていた采女を連れ、火の回りが遅い場所を選んで走る。
 仕立てのよい服が煤まみれになっても構わなかった。
 いつか来るだろうと思っていた日を迎えても悔いはない。

 しかし、心残りがあるとすれば『約束』が護れないこと。

 揺らめく炎に、在りし日を思いうっすらと笑った。



 垣根沿いにでるとそこは不思議と炎にまかれてはいなかった。これ幸いと足早に采女達を急かし、遠くに聞こえる剣戟を避けるように逃げる。
 時折響く咆哮に四道将軍が逃げだし、守りはガタガタだと報告を受けたそこには未だ常世勢に抗うもの達もいるのだと知る。

 混乱に乗じて二ノ姫も重臣も落ち延びたはず。

 二ノ姫が落ち延び、この豊葦原に帰還するならば再興の機会はいつか来るだろう。それまで、中つ国の民には生き残っていて貰わなければならない。

 否、中つ国が再興しようと常世の国に蹂躙されようと民には生きる権利があり、中つ国に殉じる必要などないのだ。

 垣根を抜け、膝を突く采女達を労っていた朔夜は、逃げ延びた際に崩れた髪を手早く結い直し、裾を荒く払った。
 煤は落ちてはいないが、気を引き締めるためだ。

 そんな朔夜の突然の行動に彼女らは目を瞬かせた。


「春ノ姫……?」
「あなた達はこのまま忍坂を越えて逃げなさい」
「姫様?」
「私は共には行けないから。後から他の者も追わせます。誇りは捨てず、命も捨てず生き延びなさい」

 畳みかけるように言い継ぐ朔夜に何かを感じたのか采女を束ねる者が朔夜の足下に額付く。

「姫様なしにどのようにして中つ国を取り戻せましょう。共に」
「いいえ、二ノ姫がいらっしゃいます。神の恩恵を受けし二ノ姫は従者と共にお逃げになられました。いつになるかはわかりません。ですが、二ノ姫がお戻りになるその時まで必死に生き延びるのです。あなたは皆を率いてあげて」
「姫様っ」
「……これが私の最後にすべきことだから」

 自然と笑みを浮かべると、踵を返し剣戟の方へと向ける。
 さめざめと啜り泣きが聞こえるが振り返っている暇はない。
 急がなければ尊い命が減っていくばかりだ。




「中つ国の者達よ! 王家最後の二ノ姫は宮から逃れられた!!今は退き耐える時です。私に続け!!」

 戸惑いを覚える声と共に「春ノ姫様!」と朔夜を認識している声も聞こえた。


 このようなときに、一ノ姫と共に宮の外に降りていたことが役に立つとは夢にも思わなかった。

「よく持ちこたえてくれました。ですが次にあなた方がすべきことは、あなたがた中つ国の民を残すことです。姫が戻られた際に民がいなければ中つ国は戻りません。宮を守る必要はない今、生き延びることを優先して下さい」
「……我が常世の兵を目の前に演説とは、よほど余裕があるのか…」
「っ!!」

 まだ後込みする兵達を説得するために足を止めていた朔夜は、突然背後から腕をとられ捻りあげられた。

 低く、抑揚のない声が耳に響く。それは、聞き覚えのある声で。

 振り向かなくとも相手がわかってしまうほど耳に馴染んでいた。

「火雷殿……っ早く行きなさい!!」
「ですが姫様!!」
「民あっての中つ国だ!二ノ姫がお戻りになられたときに民が一人もいなければ意味がないのがわからぬのか!!疾く去ね!!」

  狼狽える者達を怒鳴りつけると、普段命令されなれている彼らは迷いつつもまっすぐに駆け抜けていった。

 火雷ナーサティアがここにいるため彼が率いる兵達が追いかけるかと危惧していたが、背後にいた彼は「追う必要はない」と一言告げて、他の指示を言い渡していた。
 その間も腕を抜き取ろうとごそごそと身動きするが、走り回った疲れが出始めていた体では力が入らず、強く握られると諦めたように抵抗をやめた。

 真の目的。最後にすべきことを終えたのだ。

 問答無用で切り捨てられなかったのだから、何か話すこともあるのだろうし今すぐは黄泉路には用はない。


 ならばその時まで、愛する豊葦原の景色でも眺めるかと、足下から視線をあげ、遠くに見える香具山を見つめた。


「失礼する」
「……拘束しなくとも逃げませんよ」

 短い言葉と共に紐のようなもので手を拘束されたが、今更逃げようなどとは思わなかった。

「民がいなければ国などない、ですか。あなたは、二ノ姫が戻ってこられるとお思いで?」

 ナーサティアとは違う低い声と共に思い鎧の音がした。

 声を見なくともやはりわかる。常世の皇の盾であり剣となる将軍、ムドガラだ。

「……どこか平和なところで、健やかに暮らしていただければ」
「中つ国に舞い戻らなくともよいと?」
「民には生きる希望が必要です。例え、隠匿されるように過ごされていても二ノ姫は二ノ姫。私などよりも余程生きる気力になるはず」

 例え自分が囚われ、惨めな思いをしても一向にかまわない。むしろ国と殉じようとさえ思っているのだ。

 傍らで黙っていたナーサティアは土蜘蛛が傍に現れると、目していた瞳で朔夜をじっと見た。

「その潔さはよいものだろう。…けれど、民に広く慕われている傍系の姫である君にはこれから役立って貰わねばならない。……エイカ」
「御意」

 深く闇の底にいる者を照らし出すような瞳の炎に魅入られていると、音もなく近づいてきた土蜘蛛の奏でる不思議な音に気づくのが遅れた。


 ゆっくりと焦点が合わなくなり、閉じられていく瞳の向こうでムドガラとナーサティアが何かを言い交わしているのが見えたが、徐々に意識が飲まれていく朔夜にはなにも聞こえず、瞼が降りた瞬間に身体が崩れ落ちた。誰かに抱き止められるのを意識の遠くで感じ、朔夜の意識は暗転した。



 崩れ落ちた朔夜を抱き止めたナーサティアは、無言で腕を彼女の身体に回し抱き上げる。

「ナーサティア様、姫は私がお連れしましょう」
「構わぬ」
「……姫には、お辛いことかもしれませぬな」

 かつては中つ国に従っていた常世の国の皇子と将軍。幾度と橿原に足を運ぶ機会があり、ナーサティアの腕の中で意識を失っている朔夜とも面識はあった。
 分け隔てなどなく接する朔夜に好印象を抱いていた故にムドガラには、この姫を斬らずにすめばという武人らしからぬ思いがあった。

 だがそれ故にいっそう、これから選択させられるだろう朔夜の歩く道のりに同情を禁じ得ない。

「…すべては皇の決定に従うまで。……行くか」
「追っ手は差し向けますかな」
「向かわせる。…だが、深追いはしなくともいいだろう」

 翻り立ち去る白い外套を見て、ムドガラは思わず目を伏せた。

 深く息を吸い込むと、いつの間に鎮火したのか灰の臭いが鼻につく。
 先ほどまで朔夜が見つめていた先を眺め、軽く黙祷をした。




 豊葦原に盛大な勢力を誇った中つ国はここに滅びた。



**

字数の都合のため、いったんストップです。

だるい意識で書くとやつぱりまとまらない……。携帯で書くときはいつも情景描写が適当ですね。だからといってパソコンで書く際はいいのかと問われても答えは否ですが。

肝心のアシュヴィンがでてこなかった……。

橿原炎上の際の話はもちろん捏造です。
ナーサティアの話し方がわからないです。どうしても忍人さんみたいになるのは何故だ。

そしてせりふに勢いと生気が宿らない……。むー。

あとタイトルも決まりません。

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