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小ネタ日記

TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。 感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。

遙か×GH 遙か5

デフォルト名:天河 華織


 三度に渡り、異世界を渡り、世界を救う龍神の神子の補助者を務めた。
 重要ポジションとは正直思わなかったが、ただ重い荷を背負わされた親友や、同じ世界出身の子の助けになるならばと懸命にこなした。
 同時にそれらは、自身と向き合うきっかけにもなり、更に様々な人と知り合いになるきっかけにもなったのだ。




―――……子

 澄んだ鈴の音に華織は振り返る。しかし、そこには何もない。

「華織?」
「鈴の音……が」

 それだけで望美には通じた。
 悩むそぶりもなく、固い表情を浮かべるがすぐさま携帯電話を取り出し、ストラップを一つ外した。ストラップは彼女の手の中で首飾りへと姿を変える。
 SPRのメンバーの何人かは驚きの眼差しでそのストラップを見つめるが、望美は華織の首にストラップをかけた。

「白龍の逆鱗。華織が持っていて」
「でも、これは私には使えな」
「いいから! 私には鈴の音は、龍神の声は聞こえなかった。なら、華織はまた喚ばれるかもしれない。大丈夫、これがあれば雑魚は倒せるから!」
「ああ、白龍の神子の力がかなり移っているから……」

――の神…子よ、我……子を……

 身体に響くような声が染み入っていく。
 同時に懐かしい感覚が指先へと渡っていく。二度と味わいたくないと思っていた浮遊感が華織を襲う。
 華織の異変に、将臣や譲はいち早く気付き、そしてその異変が華織のみであることに顔を歪めて駆け寄る。
 そんな中で、望美のみが冷静に華織の手を握りしめていた。

「華織さん?!」
「おい、なんで華織だけが喚ばれてるんだ?!」
「華織、華織なら絶対大丈夫だから」
「望美、大丈夫」

『諦めなければ、運命は斬り開いていける。だから決して諦めない』

 望美と同時に同じ言葉を残すと、華織の姿はそこから消えた。





 感覚が戻り、地に足がついたと認識した華織はゆっくりと瞼を開けた。
 着物に身を包んだ人々。
 しかし、見覚えがあるようで全くない景色は、どこかで見たことがあるようなものだった。

 そして恒例ながら華織の服装は勝手に変化していて、降り立った時代に合わされたものだった。


「……磯の香りがする」

 同時に何かよくない気と、嘆き、悲しみ等が澱んでいるようだった。
 五行の流れも滞り、龍神の加護はなく、更に四神の加護も感じられない。

――神子

 一歩踏み出すと同時に、脳裏に言葉が響く。それは悲鳴のようで、嘆きであった。

 その悲鳴は、華織を喚んでいるように感じ、気づけば華織の足は勝手に走り出していた。




 足を進めれば進めるほど強くなる、水の気と陰の気。それと同時に華織の身体に感じる繋がりの温かさ。
 この世界に降り立った時から分かってはいた。けれど、分かりたくはなかったから目をそらしていたのだ。

――――ワガミコ……

「玄武に呪詛……?!」

 空に浮かぶのは、北天の守護を司る四神、玄武。その姿は禍々しく、邪気を孕み神と呼ぶに相応しい姿には見えなかった。

「攘夷を決行する我ら長州藩士の意志の堅さ、とくとその目で見るがいい」

 黒髪で長身の男が、不敵な笑みを浮かべて長い腕を持ち上げた。
 その先には、外国人二人と、奇妙な出で立ちの三人組。

「行け、玄武!」

 黒髪の男が玄武を使役しているようだった。
 彼の命令と同時に華織には玄武の命令に抗う意思と、呪詛に従おうとする狂気が伝わってくる。

「さあ、玄武よ! 招かれざる者共に決して消えぬ恐怖を与えてやれ!」

 ふざけるな! 叫ぼうと一歩踏み出すと同時に、指差されていた一人の少女が叫んだ。

「やめて! 玄武は人を攻撃したくないって言ってる。それに、この人たちだってさっき誤解と言っていたのにどうして聞き入れないの」

 心底不思議である、とでも言いたげな表情に彼女に庇われていた外国人が驚いたような顔をした。

「あなた……」
「どうした、玄武。早く敵を蹴散らせ!」
「Don't you dare!」

 少女に庇われていた外国人が前に出て腕をつきだすと、玄武の力が男との間でせめぎあった。
 そこまでが華織にとっての限界だった。

「四方にて、北天守護せし聖獣玄武よ。我が声を聞き、我が意思を聞け。我は四神の意をこの身に受けし御統なり」

 淀みなく言葉を紡ぐと、慣れ親しんだ感覚が華織の全身を満たし辺りには厳かな空気が漂う。けれど玄武へかけられた呪詛は強く、華織にはただ玄武の力を削ぐことしか敵わなかった。

「玄武よ我の声を聞け。我の意思を聞き届けよ」

 突然現れた人間が玄武へと語りかける光景は奇妙なものだった。
 力でせめぎあう二人の男は驚愕も露に華織を凝視するが、華織は常人離れした雰囲気を漂わせながらただ真っ直ぐに玄武を見つめていた。

「危ないっ!」

 低めの男性声が聞こえるが、華織は構わずに玄武に意識を集中した。

「ーー玄武、戻れ」

 力を奮うなとは言わず、華織は迷わずその言葉を選んだ。
 五行に龍の力を殆ど感じない状態では玄武を力付くで押さえることは不可能であり、また華織もしたくはない。呪詛を祓うことも難しい。だから、札に押し込める。

 目映い光が辺りに飛び散り、暫くの後、玄武の姿はそこから霧散した。
 玄武の札の持ち主である男はその瞳に狂気を宿して華織を見た。眼力の鋭さに誰もが後ずさるだろう所を華織は、体に力が入らない状態でいながら口許に笑みを浮かべ彼を見返した。

「四神の力をくだらない人の争いには遣わせない。……なんとしても止める」










「華織さんは?!」
「喚ばれていっちゃった」
「ど、どこに?」
「異世界。華織はまた、四神の神子として呼ばれた」
「四神の神子?」
「でも、なら何で望美や俺達は喚ばれないんだ?」
「白龍が換わっていたみたいだった。私達の知っている白龍ではない龍神の声だったから、きっと白龍の神子も黒龍の神子も、八葉も代替わりしたんだよ」
「ということは」
「俺達の知る白龍は滅してしまったんですね」


「滅して代替わり?」
「私もよく分からないけど、神様も何かのせいで消えてしまうの。でも偉い神様の空席は駄目だから、また新しい神様が生まれるの。全く同じ外見をしていたりするけど全く違う神様がその座に座るって華織と白龍が言っていたよ」
「華織は三代の龍神を見ているからな、俺らよりも色々知ってるみたいだったけどな」





***


遙か×GHの子が遙か5へと行く話。
ゆき達の世界とは時間軸がずれていると楽しい。(私が)

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聖夜に寄せて 移り往く季節を君と

デフォルト名:朔夜




 雪深く、風は凍てつくように冷たい。冬は深く、空気は澄んでいた。
 朔夜は両手に息を吹きかけて体をぎゅっと縮こませて、堅庭から空を見上げた。
 薄闇色の空からは、羽毛のような白い雪が降り注がれていた。手のひらに乗せると、儚い六花はじわりと朔夜の手のひらの温もりによって水へと姿を消していった。

 する筈のない、雪が降る音が聞こえる。深々と降る雪をじっと見ているだけで、厳かな管弦を聞いているような面持ちになる。
 そっと瞼を下ろすと、全ての光景が閉ざされ、感じるのは風や空気の冷たさと、雪の降る音風の吹く音。

 そして、一定の速度で響く誰かの足音。
 その音は聞きなれたものであり、朔夜にとっては安心をもたらす音。
 朔夜の後ろで止まった音に、自然と柔和な笑みが浮かんでいく。

「妹背の君は、俺に探させるのが好きなようだな」

 深い慈しみが混じりで安堵が入った声音と共に、ふわりとあたたかな腕が朔夜に回される。
 そのまま静かにアシュヴィンの腕に包みこまれ、頭を彼の肩に乗せる形を取られる。

「アシュ」
「見事な雪夜だな。常世で見慣れたものでも、豊葦原で眺めるとまた違う景色に見える」
「ええ。綺麗でしょう?」
「ああ。……見させて差し上げたいものだな」

 回された腕の力がぐっと増した。
 彼の言葉の中に込められた様々な想いを感じた朔夜は言葉を紡ぐのはやめて、ただ彼の腕に手を乗せて抱え込む。
 厚手の布越しに体温を感じることは難しい筈なのに、布越しに彼の体温を感じる気がした。

「二ノ姫に聞いたのだが」
「何を?」
「今宵は大切な者と過ごす日らしい。一体どこの国の風習かは分からんが、よいものだと思ってな」
「アシュヴィン……」

 肩に乗せた頭を傾げて夫の顔を見上げようとするが、それより先に彼の手で朔夜は眼を覆われる。いつの間に外したのか、瞼越しに感じるのは彼の素手の皮の堅さと、冷えた体温だった。

「今宵から昼にかけて、共に過ごそうと思った。なのにお前は室にいない。どれだけ方々を探しまわったと思う」
「あら、最初からここに来たのでしょう?」
「……まあ、そうだがな。だが、何故朔夜はここに居たのだ」
「そうね。理由なんて特にはないけれど……。静かな雪を見上げたいと思ったのかしら」

 目を覆う手をそっと外すように促すと、しぶしぶといった様子で片手は外された。しかし、朔夜を抱え込む腕はそのままであった。

「雪見には付き合う故、妹背の君には後で俺の我儘を聞いてもらおうか」
「無理難題でなければ、お付き合い致しますよ。背の君」
「フ……。ならば、暫しこのまま雪見でもしようか」

 二人見上げた闇空からは白い六花が静かに振り続けていた。




**

この二人のシュチュエーションは、アシュが後ろから抱え込むように抱きかかえているのが好きです。

急ごしらえ感満載のクリスマス夢です。書きあげられたら順次上げて行きますが、タイムリミットは当たり前ながら25日なので、これしかできないかもしれません

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うたプリ×ペンギン革命

デフォルト名:藤丸ゆりえ(ふじまる ゆりえ)




 幼い頃から見えた世界は、人が見る世界と少し違ったらしい。そのことにゆりえが気付いたのは、演劇好きな母に連れられてとある人物の演劇を見に行った時だった。


 何もないはずの空間に広がる光輝く羽根。輝いているのに辺りに影ができる様子はなく、その羽根の輝きは特殊なものなのだと気付くのに時間はかからなかった。


 会場を覆い尽くさんばかりの大きな羽根にゆりえは目を奪われたのだ。



 あの体験から街中を歩いていると、羽根が生えている人に出会うことはあまりなく、その羽根は一部の人にしか生えていないことを知った。そしてその羽根を見ているのは自分だけなのだということも知った。


 画面の中で光輝く羽根を持つ人は、居たり居なかったり。

 けれど次第にゆりえは確信する。あの羽根を持つものは『スター』になる素質を持つ人なのだと。

 そして羽根にも様々な種類があることも知るのだった。




 人や車が多く行き交う中、ゆりえは携帯電話を耳に当てて呼び出し音を聞きながら交差点に立つ巨大画面を眺めていた。

 画面の中には青い髪を元気よく跳ねさせながらくるくると踊り跳ねながら楽しそうに歌う少年。

 あまりテレビを見ないゆりえだが、彼だけは前から気になっていた。

 芸名は『HAYATO』
 バラエティーもこなすお茶の間のアイドルだが、歌も歌う。

 明るく、そして可愛らしい雰囲気を纏う少年のファンは多い。


 ゆりえは、しかし彼とどこか似ている少年を知っていた。
 母に似て演劇好きを受け継ぎ、何ヵ月に一度だけ自分のごほうびに見に行っていた舞台に立っていた少年。まだまだ荒削りだったが、彼にはゆりえが惹かれる決定的な理由があった。

 まだ羽ばたく前の、光輝く羽が生えていたのだ。


 その少年の羽根はとても美しく、これからの成長に期待をする程のものだった。


 今画面で踊り歌う少年の羽根と酷似していた。


「でもHAYATOなんて名前だったかなぁ」
『お姉ちゃん?』
「あ、ゆかちん?」

 繋がった電話の相手の声に心が弾む。
 7つ年下の妹。藤丸ゆかりである。
 藤丸一家は父とゆりえと妹のゆかりの三人家族である。
 父親は昔から当たり外れの大きな事業に手を出しては成功と失敗を繰り返す人で、豪華な家に住んだり夜逃げをしたりということは何度も経験させてくれる人だった。

 ゆりえとゆかりは、そんな父に振り回される母を支えるために出来ることを精一杯したが、疲れきった母はある日家を出ていったまま帰ってこなかった。


 そんな愛すべき父を見本に育った二人の姉妹は安定した職業を夢に抱き、将来は公務員! を目標に日々を過ごしていた。

「元気?」
『うん、父さんは今の所は順調だよ』
「よかった。ゆかちんと父さんに会いに行こうと思ってて」

 携帯電話にかけて呼び出し音が鳴った時点で、父親の事業がまだ成功していることは分かっていた。しかし、妹の声で大丈夫だと言われると安心するのだ。


『本当? じゃあご馳走作らないとね』
「姉さんはゆかちんの卵焼きが食べたいな」
『はいはい』

 くすくすと笑う声が携帯越しに聞こえる。こんな些細なやり取りに幸福を感じる。

『ねえ、お姉ちゃん。仕事ってどんな仕事?』
「大丈夫だよ。父さんみたいに博打じゃないし、安定したお仕事です。事務職みたいなものだしね」
『でも、なんて言ったっけ……なんか変な仕事じゃないよね?』
「シャイニング事務所だよ、一年ずっとアルバイトさせて貰っていたし、社員の人達もいい人ばかりだし。何より頑張ればゆかちんの大学の費用を出してあげられるもの!」

 ぐっと拳を握りしめながら信号が変わった交差点に足を進める。電話の向こうで妹が唸っているのが聞こえる。
 ゆりえのことが心配だが、やはり心が揺らいでいるようだ。

 だが、自分がゆかりの立場だったら心配になる。
 元々姉妹揃ってメディアには疎く、芸能人の名前も顔も知らない。
 関心があるのは『羽根』が生えているか。


 ゆりえしか見ることが出来ないと思っていた羽根は妹のゆかりも見ることが出来るようになっていた。


「社員になったら、ゆかちんにもきちんと説明してあげる。だから今はお姉ちゃんを信じて、としか」
「おい、ゆりえ」

 交差点を渡りきり、待ち合わせ場所で通話を続けていれば、携帯電話をあてていない方の耳に低い囁きが聞こえてくる。
 慌てて振り返ると、そこにはサングラスと帽子を被った仕事場の大先輩である日向龍也が立っていた。

「あ、日向さん」
『お姉ちゃん?』
「あ、うん。ゆかちん、次の土日には帰るからね! 卵焼き忘れないでね!」
『はいはい。父さんと待ってるからね』
「ゆかちん愛してる!」
『はいはい。待ち合わせしてるんでしょ? また今度ね』
「うん。バイバイ」

 通話を終了し、携帯電話を鞄へとしまう。
 そのまま龍也へと向き直るとゆっくりと頭を下げる。

「お待たせしてすみませんでした。今日はありがとうございます」
「気にすんな。遅れてきたのはこっちだからな。電話、良かったのか?」
「はい。妹と父の安否確認なので」
「(安否確認?)そ、そうか。なら行くか。荷物は……」

 龍也はゆりえの足元に目をやるが、想像していたものが全くなく呆気にとられてゆりえの全身を凝視する。
 小さなリュックが一つ、大きめのキャリーバックが一つ。小さな肩掛けが一つ。ゆりえの荷物はそれで全てだった。

「残りは宅配にしたのか?」
「いえ、これで全てです。大荷物ですみません」

 羞じらったように笑うゆりえに調子が崩れるのか、龍也は首に手をあてて考えながらも片手を出す。
 大きくて優しい手をきょとんと見ていると、通じなかったことにため息を着いた彼は一言「リュック」とだけ加えた。
 言われたことの意味に気付いたゆりえは慌てて首と手を全力で振り、必要ないと訴えかける。

 しかし、龍也が凄みのある目で見つめ続けると降参したのか渋々リュックを下ろし龍也へと手渡した。

「すみません……」
「気にすんな。それにしても一人暮らししてたのにこんだけか?」
「はい。夜逃げするときは最低限しか持っていけないので、その癖から最小限の荷物しか持たない癖が……」
「夜逃げ?」
「あ」

 ゆりえの口から飛び出した言葉に驚きのあまり龍也の目が丸くなる。彼の反応から何気なく口にしてしまったことに気付き、ゆりえは口をてで押さえるが出てしまった言葉はもう戻らない。
 互いに互いの言葉を待つが、先にしびれを切らしたのは龍也の方だった。

「悪い。言わなくていい」
「あ、その……なんといいますか」
「とりあえず、どっかで飯食ってから寮に案内する。何食いたい?」
「え? 特に苦手なものは」
「んじゃ俺のオススメな。行くぞ」

 いつの間にかキャリーバックまで持たれていたことに気付いたゆりえは慌てて龍也の後を追いかけ、荷物をひとつずつ運ぶことを妥協させられた。

 安定した職業ということで公務員を目指していた自分が、一般企業。というには型破りなアイドル事務所ーーシャイニング事務所の社員になるとは思ってもいなかった。

 出会いは一年前。

 龍也の後を追いかけながら、ゆりえは振り返る。交差点の信号は歩行者が赤で、車道を車が走り抜けていく。足止めされている歩行者は、携帯電話を触るもの、同行者と話す者、広告塔を見上げる者とそれぞれに思うままに行動している。


 あの日、気晴らしに足を向けたCDショップでの出会いがゆりえの人生を変えた。

 雨上がりのあの日。



***


うたプリ×ペンギン革命って面白いんじゃないかな。と思ったが最後。
アクセル全開で書き留め続け、導入編を書いてみました。龍也さんが贔屓なのは私の趣味です!!

ペンギン革命を知らない人でも、うたプリを知らない人でも楽しんでもらえるように書きたいです。

拍手[8回]

期間限定企画 『思いもよらない横槍に』青空の下で

『もしも君と』

デフォルト名:黄有紀




 隣にいるのが当たり前だと思っていた。


 とある話を聞くまでは。あの穏やかな笑みをそばで見るのは当たり前であり、それは決して揺るがないことなのだと。
 当たり前のように信じていた。

 絳攸は耳を疑いつつ、情報をもたらした腐れ縁を睨み付けた。

「有紀が見合い?」
「おや、絳攸。君が知らないのかい? なんでもとある勇気ある命知らずが黄尚書にお願いに行って、その場にいた黄家の誰かの口添えもあって今度の休みに実現するって噂だよ」

 睨み付けられたことなど気にしない腐れ縁こと藍楸瑛はぺらぺらと澱みがない口調で仕入れた話を披露していく。
 見合いを申し込んだ勇気と無謀を履き違えた青年の評価を華し続ける楸瑛を気にも止めず仕事を続けていたつもりでいた絳攸だったが、真剣に聞き入っていた劉輝がぽつりと溢した一言に手を止めた。

「有紀が結婚してしまったら余は有紀とは会えなくなるのだな……。寂しいのだ」
「……主上、今何て言いました?」
「ん? だから有紀が結婚してしまったら余はもう有紀とは会えなくなるのだなと……絳攸?」

 驚いたように手を止めたままの絳攸を劉輝は訝しげな目で見るが、楸瑛は何かに気付いたように楽しげに顔を歪めると、したりげに何度も頷く。

「ははーん、絳攸。君、有紀殿とはいつまででも幼馴染みで居られると思っていたのかい?」
「有紀と絳攸はずっと幼馴染みでいるのだろう?」
「違いますよ、主上。絳攸は有紀殿が結婚されることを全く考えていなかったのですよ。だから、有紀殿が結婚されると今のように気軽に会えないことを考えていなかった」

 違うかい? としたり顔で絳攸を揶揄するかのような楸瑛の発言は、しかしながら本人には届いていなかった。





 その日の絳攸は道を間違えることなく仕事を終え帰路についていたが、吏部ではついにこの世の終わりが来るのだと大騒ぎになり、戸部では尚書の機嫌の悪さが最高潮に達した為か倒れる官吏が続出したということについぞ気付かずに帰宅した。

 心ここにあらずといった風な絳攸が意識をはっきりとさせたのは、邸にいるはずのなかった人物だった。


「おかえり、絳攸」
「ゆ、百合様?! いつお帰りに…! あ、黎深様はこのことを」

 驚きのあまり動揺を露にする息子にくすりと笑みを浮かべながら、百合はその手を取って部屋へと誘う。
 手のひらに収まる大きさだった小さな手が、百合の手ではおさまらない程大きくなったことに嬉しさと寂しさを覚えながら、急遽貴陽に駆けつけた理由を話始める。

「黎深から早馬が来てね、時間差で玖琅からも来たんだけどね」

 実は邵可からも文が届き、それが一番事情把握がしやすかったとは言わない。
 百合は振り返り、絳攸の肩をがしりと掴むと天井に向かって叫んだ。

「有紀ちゃんがお見合いするって言うじゃないの! しかも次の休日! こうしちゃいられないわ!」
「え、そんな理由で帰ってこられたんですか?!」

 しかも玖琅も同じ内容で早馬を出したというのだろうか。
 絳攸の疑問が顔に表れていたのか、果たして愚問だったのか百合は握りしめた絳攸の肩をガタガタと揺さぶった。

「何言ってるの絳攸!有紀ちゃんは絳攸がお嫁さんに貰って、私の娘になるの!だから他の男に盗られちゃ駄目なのよ!」
「はい?!お、俺が嫁に……?!」

 驚愕に見開かれた瞳にびしりと人差し指を突きつけて百合は厳しい表情を浮かべる。子供を諭すかのような仕草は幼い頃よく黎深相手にしているのを見たことはあったが、まさか自分がされる時が来るとは思わなかった絳攸は更に驚きに固まる。

「何今更言ってるの。黎深と良好な舅嫁関係が築けるのは有紀ちゃんしかいないし、絳攸が平気な女の子は有紀ちゃんしかいないし、私も有紀ちゃんしか娘は厭だもの」

 玖琅が動く理由はそこか、絳攸は気付く。そして半分以上は、紅家の都合であることに落胆しかけたが、次の百合の言葉に完全に思考を停止させた。

「何より、絳攸が好きな人なんですもの。断然邪魔しないとね!大丈夫よ、安心して。黎深が動くと大惨事だから玖琅が動くことになったから」

 黎深が動こうと玖琅が動こうと対象にされた相手に取っては大惨事には変わりないのだと、いつもの絳攸ならば突っ込みを入れていた所だが、絳攸はこの時のやり取りを覚えていなかった。




***


大変遅くなりました。
リクエストを頂いてから半年以上……。いや、サイトのリクエストは年単位でお待たせしてしまっておりますが……。

生弦さまから頂いたリクエスト、『青空の下で』から『もしも君と』の『絳攸の自覚編』です。

傍にいるのが当たり前過ぎて、きっかけがないと自覚しないだろうなぁと思ってます。

ちなみにお見合いは鳳珠もぶち壊す気満々だったと思われます

拍手[20回]

青エク

デフォルト名:木下風夏(このした ふうか)



 風夏に幼なじみは二人いる。
 同じ年の男の子で、性格は似ていないような似ているような。

 双子という同じ日に生まれた兄弟であるその二人は、どこか普通の子供とは一線を引いているが、風夏には大切な幼なじみであることには変わりなかった。


「おーじさまー?」

 黒い服を着こんだ大きな背中に呼び掛けると、相手はゆったりと振り返り辺りを見渡す。すぐさま物陰からひょっこりと姿を表す風夏に気付き、にっこりと笑うと風夏の視線に合わせて屈み込んだ。

「お、風夏ちゃんじゃないか。今日は一人か?」
「うん、雪と燐とは別に帰ったから」
「うーん、あいつらは何か今日も喧嘩してきたのか?」

 風夏は少し考え込むように俯きがちに首を傾げる。

「おじさまは何も聞いてない?」
「ああ、燐なんか『クソジジイには関係ねー!』とか言ってな。雪男も黙りだ」

 おじさんは悲しいねぇ、と泣き真似をしてみせる獅郎に風夏は更に難しそうに考え込むが、じっと獅郎を見上げた。

「おじさまは怒っちゃ駄目だからね?」
「ん? 何をだい?」
「燐がクソジジイって言ったのは怒ってもいいけど、喧嘩したことは怒っちゃ駄目だからね? 約束してくれたら、喧嘩のお話してあげる」

 ムッと、難しい顔をしたまま風夏は右手を獅郎へと差し出して小指を突きつける。
 その小さな小指に獅郎は指を絡ませてにっと笑みを浮かべて指を振る。
 絡まった小指に風夏は同じようにニカッと笑うと、約束を交わす。

 飯事のようなやり取りでも、風夏にとっては大切な『約束』の取り決めである。燐や雪男は最近はこの約束を交わしてくれないから、獅郎が快く交わしてくれたのも嬉しかった。


「おじさまも分かってると思うけど、燐がクラスの男の子と喧嘩したの。でもね、雪が嫌がらせされてたのをね、止めろって怒ってくれただけなの。そうしたら、相手の子が燐を突き飛ばしたの。だからね、燐はせーとーぼーえーなんだよ」

 でもかじょうぼーえーかもね、と腕組をして難しい顔をする風夏に獅郎は優しい笑みを浮かべる。
 慈しみの色が浮かぶ笑みと共にそっと風夏の頭を撫でながら獅郎は言葉を選ぶ。

「燐は雪男を守っただけだから怒るなってことでいいのかな?」

 喧嘩っ早くて相手を重傷に追い込む燐だが、こうして燐の行いを肯定してくれる同年代の少女がいてくれるのはとても有り難いことである。
 しかし獅郎の予想とは違い、風夏はキョトンとして首を振って否定を示した。

「違うよ?」
「え、違うのか?」
「うん、相手の子と燐と雪は私がもう怒ったから、おじさまは怒らないでねってこと」

 ニコニコと事も無げに告げる風夏に思わず二の句が告げずに絶句してしまった獅郎だったが、そういえばこの子は木下家の娘だったと思い出す。


「喧嘩りょうせいばい!」



**


使い回しで申し訳ないですが、夢喫茶より青エクの設定です。

奥村ツインズの同じ年の幼馴染み。
雪男と同じ年に祓魔師になります。
手騎士と詠唱騎士の称号持ちで手先はぶきっちょ。

スカートだろうと平気で回し蹴りをかます子。

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【TOS・TOA・彩雲国物語・遙か・十二国記など】の名前変換小説の小ネタを載せております。
各小話のツッコミ大歓迎です!
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【schiettamente】又は【軍人主】
 └TOAマルクト軍人主人公
 デフォルト名:ラシュディ・フォルツォーネ

【教団主】
 └TOAローレライ教団主人公
 デフォルト名:アディシェス・アスタロト

【アゲハ蝶】
 └TOA雪国幼馴染主人公
 デフォルト名:エミリア・ティルノーム

【ensemble】又は【旅主】
 └TOS旅仲間主人公
 デフォルト名:アトラス・ファンターシュ

【一万企画】又は【企画主】
 └TOSロイド姉主人公
 デフォルト名:セフィア・アービング

【傍系主】
 └TOA傍系王室主人公
 デフォルト名:ルニア・ディ・ジュライル

【十二国記】
 └雁州国王師右将軍
 デフォルト名:栴香寧

【遙かなる時空の中で3】
 └望美と幼馴染。not神子
 デフォルト名:天河華織

【明烏】
 └遙かなる時空の中で3・景時夢
 デフォルト名:篠崎曙

【彩雲国物語】
 └トリップ主
 デフォルト名:黄(瑠川)有紀

【コーセルテルの竜術士】
 └術資格を持つ元・旅人
 デフォルト名:セフィリア・エルバート
 愛称:セフィ

【まるマ・グウェン】
 └魔族
 デフォルト名:セレスティア・テリアーヌス
 愛称:セレス

【まるマ・ギュンター】
 └ハーフ、ヨザックの幼馴染
 デフォルト名:シャルロッテ・ティンダーリア
 愛称:シャール

【逆転裁判】
 └成歩堂・御剣・矢張の幼馴染で刑事
 デフォルト名:筒深稔莉(つつみ みのり)

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