忍者ブログ

小ネタ日記

TOS・TOA・彩雲国物語等の名前変換小説の小ネタを載せております。 感想・意見・質問ございましたら各記事のコメント、もしくはサイトにてどうぞ。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

彩雲国物語 ボツネタ

簡素だが食事も美味しく、人もしっかりした宿についたのは有紀が龍蓮と再会して三日後のことだった。
宿代節約のために二人で一部屋をとるのは毎度のことであった。


「有紀、君にこれを贈る」

言葉と共に満面の笑み(有紀にはそう見える)で何かを手渡された。

「なに?」
「開けてみてくれ」

言われるがままに包まれていた包装を解くと、小さな青い耳飾りが出てきた。

指で掴み、目の前にかざすと繊細な細工がキラキラと光った。
日の光りが当たると深い青に見えるのが不思議であった。

青。

「えっこれ禁色じゃ…」
「案ずることはない。装飾品は大丈夫だ」
「……嬉しいけど気持ちだけでいいよ龍蓮」

そもそも何故久しぶりに会って数日経ってから渡されるのか意味がわからないのだがそこは龍蓮なので深く突っ込まない。

「愚兄達に女人に感謝を贈りたい場合は装飾品が良いと聞き作らせた。有紀に似合うだろう」

嬉しそうに(有紀にはそう見える)笑い龍蓮が耳飾りを取り上げた。

注意深く見てみるとどうやらピアスと同じタイプらしい。
そこでようやく有紀は今渡された意味を知った。
街につき宿の中だから彼は渡したのだろう。

耳たぶに穴を空けなければいけないから。

そして龍蓮はどこか不安そうに(有紀には)見えた。

「貫通型なら簡単に外れないものね。ありがとう龍蓮。大事にするね」
「……心の姉の身体に傷をつけるのは本意ではないのだが」
「龍蓮がやってくれるなら気にしないよ?」

彼の手の中にある耳飾りは青い石が下がっており、石には透かし彫でとても美しい花が描かれていた。

水に浮かぶ花。

「龍蓮とお揃いだね」
「うむ」

『双龍蓮泉』からつけられた『藍龍蓮』の名前。

有紀の耳飾りはその時から青く輝いていた。



**

ボツネタです。(ならあげるな)
これに関連して後日対抗意識を燃やした黎深さまに唆された絳攸がかんざしを贈るエピソードもありますが、それもきっとお蔵入

拍手[3回]

PR

彩雲国物語 かけがえのないもの

穏やかな落ち着いたもう一人の憧れの女の人。

秀麗にとって黄有紀とはそういう存在だった。


「ねえ、有紀さん」

秀麗の目の前で刺繍をしていた有紀は顔を上げた。

「有紀さんは龍蓮のこと『大切な人』って言ってたけど……」

秀麗のその言葉に隣でお茶を飲んでいた影月と珀明がギョッとした。
その反応が特に珍しくないのか有紀は動じずに針から手を離し、布を膝に置いた。

「うん。龍蓮は私の大切な人」
「それは″そういう意味″で?」

けれど秀麗の予想とは反し、有紀は首を振った。その表情はどこか寂しげで、闇夜の三日月のような危うさがしていた。

「龍蓮はね、私を甘やかさないでくれるの」
「甘やかさない……?」

珀明と影月は龍蓮と有紀が顔を合わせていたときの事を思い出してみた。
獄舎に放り込まれた四人にイヤな顔一つせず、むしろ楽しそうに食事を持って来てくれた有紀。
龍蓮は有紀に欝陶しい程べたべたとひっついていた。彼女は彼女で嬉しそうに龍蓮の世話を焼いていた。

「龍蓮が有紀さんに甘えていましたよねー?」
「僕にもそう見えた」

不本意そうに秀麗も頷く。

「私の周りにいる人は優しいから、甘やかしてくれるの。甘えさせてもくれる」
「甘やかすと甘えさせる?」

有紀は頷くと不意に外を見た。
新月のために白い月は浮かんでいない。

「龍蓮は甘えさせてくれる。でも絶対甘やかさない」

人の輪に入るのが苦手。人に自分から話し掛けるのも苦手。優しいから手を引いてくれる。
甘えたくないのに、甘えてしまう。それは『甘やかされている』
自律しなければと思えば思う程深みに嵌まる。それは底無しの泥沼の様で……。
けれど、龍蓮は甘やかす事なく立っていてくれる。
彼から手を掴むことはない。でも、手を伸ばせば掴み取ってくれる。
待っていてくれる。それは『甘やかしている』のかもしれない。
けれど有紀はそれを『優しさ』だと思っている。
手を伸ばし、掴み、引いても嫌がらないでいてくれる。喜んで受けてくれる。
ダメな事はきっぱりと「No」と。

鳳珠が他の人と別格にいるように、龍蓮も有紀の中では別格にいる。その中に今では劉輝も含まれているのだが。

「大切な人……それは、絳攸様よりも?」
「李絳攸様?!」

驚く珀明に「幼なじみよ」と告げると有紀は困ったように微笑みを浮かべた。

「大切な人達に順列はつけられないわ。……でも」
「でも……?」
「秀麗ちゃんも大切な友達よ」



うまくごまかせていないと知りつつも有紀は敢えてそれ以上は言わなかった。




(世界に光を灯す一滴)

**

龍蓮が好きだー!

拍手[2回]

青空 原作沿い

 大きな図体をして、こそこそしている人間というのは客観的に見るととても怪しい。


 後宮に来て一週間。有紀は、府庫でそんなことを思った。
 しかも、そのこそこそしている人間は禁色である『紫』の衣を無造作に纏っている。

 例によって例のごとく邵可とお茶をしようと仕事をさっさと終わらせて府庫に訪れた有紀は、茶請けに持ってきたドーナッツをもち困ったようにそこに立ち尽くしていた。


 『紫』を纏った青年は、戸棚に手をかけて邵可がいると思われる個室をちらちらと覗いている。
 さらさらと長い髪が、反動で揺れている。


 声をかけるべきか、かけぬべきか。それが問題である。

 有名な一説を勝手に使用すると、よし。とこぶしを握り締めた。


「邵可様に御用がおありですか?」
「―っ」

 有紀の存在に気づいていなかったのか、青年が鋭く振り返った。
 その機敏すぎる動きで振り返った青年の整った顔立ちが、凄絶さを浮かべている。

 薄茶の透き通った瞳が浮かべているのは・・・――。

 互いの視線が交差し、青年が逸らそうとした瞬間に優しげな府庫の主の声が響いた。

「おや、有紀さん。いらっしゃい」
「邵可様・・・」
「邵可・・・」

 青年と声が被った。
 意外そうに有紀と青年を見た邵可は、有紀が持っているものに視線をやり、あの暖かい笑顔を浮かべて「どうぞ」と二人を招きいれた。
 邵可に誘われると青年も断り辛いのか、青年は苦しげな表情を浮かべて邵可の後に続いた。

 いつものように有紀が茶を淹れる。いつもと違うのは人数が一人増えている。ということである。

 いつまでも強張っている青年の表情に苦笑を浮かべる邵可を見て、首を傾げつつも作ってきた茶請けであるドーナッツを備え付け(何故あるのかわからないのだが)の皿に載せた。
 すると、青年の緊張が一瞬だけほぐれたようだった。
 慎重にドーナッツを手に取る青年。

「これは・・・」
「これを作ってくださっているのは彼女ですよ」
「・・・そなたは」

 再び薄茶色の瞳と視線が交わる。
 先程と違うのは、相手には困惑の色が浮かび、有紀にはなんの感情もわいていないこと。
 静かに青年の前に湯のみを置くと、有紀は略礼をした。

「始めまして、有紀と申します」
「・・・そなたが珠翠の言っていた新しい女官か」
「珠翠様をご存知なのですか?」

 青年はぴしりと固まった。一気に湯のみの茶を飲み干し、咽ている。

「だ、大丈夫ですか?」

 慌てて駆け寄り、背中を軽くさする。慌てている有紀と青年を邵可がのんびりと微笑ましそうに見ていた。
 収まり始めた青年の為に新たに茶を注ぐと、彼はなみだ目になりながらゆっくりと茶を飲んだ。

「・・・すまぬ」
「私こそ驚かせてしまったようで、申し訳ありませんでした」
「この菓子はそなたが作っておったのだな」

 指で涙をぬぐうと、青年はドーナッツをもそもそと食べ始めた。
 そういえば、と。有紀は思い出す。
 ここ数日間。邵可に何か作って持ってくると「少し多くもらってもよろしいですか?」と聞かれては「どうぞ、邵可様の為に作ってきたんですから」といって一人分にしては多すぎる量のものをおいていっていた。

「邵可様が一緒にお食べになっていた方なんですね」
「ええ、ありがとうございました」
「喜んで食べていただけるだけで私は嬉しいですから」

 ものすごい勢いでなくなっていくドーナッツに気づいた有紀はとりあえず自分と邵可の分は確保した。

「お気に召しましたか?」
「・・・餡子の多いものも好きだ」
「おはぎですね。では、今度はそれを作って持ってきます」
「よいのか?」
「ええ」

 又も空になっている湯のみに茶を注ぐ。
 先程、交差したときの彼の瞳には「怯え」という抱くことが不思議な感情が浮かんでいた。それが今は消え、おいしそうに有紀が作っているものを食べている。
 それが嬉しくて有紀は知らず知らず笑顔になっていた。後宮に入ってから浮かべてばかりいるつくり笑顔ではない、やわらかい笑み。

「そういえば」
「・・・うむ?」
「お名前をお聞きしてもよろしいですか?」

 ぴたり。と、青年の動きがまたも止まった。じっと、その顔を見ていると視線が宙を彷徨っている。
 それは、黎深が邵可に追求されたくないことを追及されたときに見せるものや、絳攸が同じく追及を逃れたいときに見せる表情に似ている。

 もう既に、彼の纏っている服装から名前など検討がついているのだが必死になってごまかそうとしている様子がなんだか微笑ましい。
 たとえ彼がどういう考えでごまかそうとしているか、とかはどうでもいいのだ。

「・・・り、劉輝という」
「『劉輝様』ですね」
「う、うむ」

 偽名を言われるかと思ったが、彼は名乗った。姓は言っていないが。
 有紀はクスリ、と笑うとそっと彼の顔に指を伸ばす。
 劉輝がビクリと反応して、眼を閉じた。それにあえて気づかない振りをして有紀は劉輝の頬についていたドーナッツのカスを指でぬぐった。


「ついていましたよ」
「・・・すまない」
「いいえ」


 それが出会いだった。


**


 中途半端ながら、とりあえず終わり。

拍手[1回]

青空 繋ぐ扉の謎

 本日、鳳珠は公休日である。
 そして、なぜか黎深や悠舜と出かけるのに有紀も連れて行ってくれるらしい。
 公休日に三人でお出かけしている時は有紀はそのまま絳攸と一日を過ごしているのだが、どうしたのだろうかと内心首を傾げながらも行き先はどうあれ誘ってもらえたことが嬉しかったので、首を縦に振った。


 軒に揺られて数刻。

 ついた場所は、鳳珠の屋敷以上に広い邸宅であった。
 しかも、なぜか黎深がそわそわとしている。しまりのない顔をしていて、なんというか警察がいたら(この国にはいないらしいが)職務質問をされそうである。

「れ、黎深さま・・?」
「なんだ」

 けれど、話しかけると途端に普通の表情を浮かべる。けれど、瞳は嬉しさに滲んでいた。
 けれど、どう考えてもこの豪邸に自分は場違いではないかと思わず鳳珠の服の端を握り締める。
 そんな有紀の珍しい行動に鳳珠が、驚いたようなけれど優しい表情でしゃがみこみ、視線を合わせる。

「どうした」
「えと・・・その。私、場違いだと思うんですけど・・・」
「だそうですが、黎深。どうなさいますか?」

 悠舜と鳳珠の視線を向けられた、黎深は屋敷を見ると再び顔を緩ませる。黎深の大好きな人の屋敷なのだろうか、と思い有紀も黎深を見ると突然振り返った黎深と目が合った。
 やはり屋敷から目をそらすと途端に普通の表情を浮かべている。何故、そこまで完璧に感情の制御を行えるのだろうかと、場違いだと思ったことを忘れて不思議に思っていると、黎深が片手を差し伸べた。


「ここは私の兄上の邸だ。兄上がお前も連れて遊びに来いと言っていらしたから、お前もつれてきた」
「黎深さまの、兄上さまですか・・・?」
「さっさと来い」
「え、あ。わっ・・・」

 ぐい、と手を引っ張られてそのまま邸の門へと連れて行かれる。黎深に有無を言わせずに引っ張られるのはこれで何度目なのだろうか、と考えながらも助けを求めるように鳳珠と悠舜を見る。だが、鳳珠は足の悪い悠舜に手を貸していて、残念ながら有紀の助けを求める視線には気づかなかった。


(5歳児じゃないんだけどなぁ・・・)

 彩雲国に来て一年。一つ年上ぐらいだと思われる絳攸が10歳になったので、おそらく有紀はこの体は9歳ぐらいだと思っている。
 9歳といえば、小学校3年か4年である。

(・・・手つないでったっけ?)

 思い出せないが、見上げる黎深が嬉しそうだからまあ、いいかと完結させた。






「ほう、そなたが鳳珠殿の養い子か?」
「そうですよ、義姉上」
「名はなんという?」

 黎深の兄である穏やかな顔立ちのいかにも「父親」然たる人の名前は紅邵可というらしい。
 そして、その隣にいた鳳珠にも勝るとも劣らない美しい顔立ちの女性は邵可の妻で薔君と名乗った。
 見た目はいかにも深窓の姫君、なのに躊躇することなく床に膝をつき有紀と目線を合わせてきたことに有紀はとても驚いた。


「有紀、と申します」
「よいよい、堅苦しい言葉など使わんで。のう、背の君?」
「・・・!?」
「どうかしたかい? 有紀さん」

 邵可の奥方の話し方といい、その『言葉』といい。全てが有紀を驚愕させ、同時に感動させた。
 感極まってしまった有紀を不思議そうに見る邵可夫妻だが、黎深率いる三人はこの夫婦の一人娘秀麗と家人の一人静蘭と共に遊んで(?)いる。
 ので、助け舟は誰も出してくれないので有紀はなんとか思いとどまり正直に話すことにした。

「えと、その・・・。奥方さまは本当に、邵可さまのことを大切に思っていらしているんだなぁと思ったら・・・」

 言葉にし始めたら恥ずかしくなってきた有紀は頬を染めながら、恥ずかしそうにちらちらと二人を見た。

「・・・ふむ。妾はこういう反応をとられたのは初めてだからの、よくわからんが。邵可、わかるか?」
「うーん・・・?」
「その・・・。背の君って、本当に大切な方にしか使わない呼び方だと私は思っていたので・・・」
「ほほう」

 ぽす。と頭の上に手が載せられた。そして、にんまりと笑った奥方殿は楽しそうに有紀の頭をなでていた。

「ほんに、有紀殿は面白いのう」
「へ、えと・・・。ありがとうございます?」
「うん。邵可、ちょっくら有紀殿と女二人で話したいことがある。黎深達の相手をしてやってくれぬか?」
「うん、いいよ」

 あっさりと追い払われに応じてしまった邵可によくわからないままに軽く会釈を返すと、笑い返されてしまった。
 そして、目の前にいた奥方は移動していて、隣の席をぽんぽん、と叩いていた。まるでここに座れといわんばかりに。

「して、有紀殿。おぬしは、不思議なところからまいったの」
「・・・わかるんですか?」
「しかも『扉』を無断で潜ったな?」
「『扉』?」

 扉、といわれるようなものを潜った覚えは有紀にはない。
 ただ、階段から落ちただけだ。
 だが、奥方はまじめな顔をして指で軽く長方形を描いた。見えない何かを空でなぞるように。

「偶然何かの拍子であいたのを潜ってしまったのじゃな。『扉』には『仲介人』が本来はついておる。本来ならば『仲介人』がおらねば開くことはない。して、そなたは無断で『扉』を潜った。二度と、潜れることはないだろう」
「・・・・・・なんとなくですけど、帰れないことはわかっています」

 奥方の示す『扉』と『仲介人』というのはいまいちわからないが、それが意味することは決して帰れないということである。
 それは、理解している。あらゆるものから『瑠川有紀』が消えた、あの日から。

 すらりとした指が有紀の頬を伝った。奥方が綺麗な指で有紀の輪郭をなぞっていた。

「奥方さま・・・?」
「そなた、面白い眼を持っておるの」
「目?」
「眼じゃ。色とかではないぞ」

 元から黒いですといおうとしたが、先手を打たれてしまった。
 きょとん、と奥方を見ていると彼女は妖艶に笑う。その美貌でその笑みは、はっきり言って心臓に悪い。

「有紀殿。そなた、黎深を見て最初にどう想うた?」
「黎深さま、ですか・・・?」

 小さく顎を引いた奥方はようやく有紀の顔から指を引いた。
 ほっとしつつ、黎深に会った時のことを思い出す。


 倣岸不遜で、居丈高な態度。覗き込んだ瞳はとても、冷えていた。


 その時のことをまざまざと思い出し、有紀は知らず知らずのうちに寂しそうな表情を浮かべていた。

「とても、哀しそうな瞳をしていると想いました」
「哀しそう、か。うむ、中らずとも遠からず、じゃの」

 よう聞けや。そう言った奥方は、すごく嬉しそうに笑った。

「有紀殿は、よい眼を持っておる。その眼は、千里眼というわけではないが、その気になれば人の感情を全て読み取ることができる」
「・・・はい」
「じゃあ、おぬしはそこまで人の感情を読み取りたいとは思うとらんから『気持ち』が見えるだけじゃ」
「気持ち?」
「今の妾を見て『嬉しそう』だと。黎深が『寂しい』と、本人も気づいておらぬことに気づいておる。まあ、黎深には我が背の君がおるでの」

 背の君。そう呼んでいる奥方もとても幸せそうに、けれど悲しそうに笑う。
 この人は、いったい何をどこまで知っているのだろうか。

「見たくもない『気持ち』が見えるかもしれん。それは、有紀殿。おぬしの気持ちのありよう次第で見えるようにも見えぬようにもなる」
「え、気持ちのありよう・・・?」
「うむ。まあ、無意識のうちにきちんと使い分けておるようじゃな」


 なんだかよくわからないが、普通じゃない眼を持っているらしい。
 奥方はこの話は終わりだとばかりににっこりと笑い有紀の頭をくしゃくしゃになでた。

「あまり気負うでないぞ。そなたは好きなように生きていけば、自ずと道はできてゆくに。して、有紀殿」
「・・・はい?」
「妾はあまーい菓子を食べたいのじゃが、そなた面白いものを知っておるかの?」
「あまーい菓子・・・ですか」
「なに、今じゃのうてよいのじゃ。また来るときにでも作ってきてくれ。楽しみに待っておるぞ」


 どうやら異国の甘いお菓子が食べたいらしい。
 甘い菓子といわれて思い浮かぶのは、饅頭やら羊羹だが、それはこの世界にあるらしい。
 甘い菓子。
 ケーキ、プリン、栗きんとん。思い浮かぶのはいいが、材料がない。
 首を捻り、考え始めた有紀を見て、奥方は笑った。


「お話はもう終わったかな?」
「うむ。終わったぞ邵可。さて、有紀殿。妾のかわいい秀麗と遊ぶのじゃ」
「秀麗は今日は元気だからね」

 ひょっこりと戻ってきた邵可と、奥方に率いられ黎深達と一緒にいる秀麗の元へと行くと、両手に花(?)を引っさげた有紀を恨めしそうに見る黎深と目があってしまった。
 そんな黎深を呆れたように鳳珠と悠舜が見ている。

「秀麗、新しい遊び相手じゃぞ?」
「はい?」

 新しい遊び相手。その言葉に顔を輝かせた秀麗は、有紀の目には贔屓目なしに可愛らしく移った。
 
「おねえさま、おなまえは?」
「有紀です。えーと・・・」
「しゅうれい!」

 どう呼べばいいのか困り、振り返ると奥方や邵可が「好きに呼んでいいよ」と言って笑っていたので、考えたあげく有紀は秀麗の視線にあわせてしゃがみこんだ。

「よろしくね、秀麗ちゃん」


 有紀に新しい、年下の友達ができた時だった。




**おまけ


「鳳珠さまの子守歌初めてききました」
「・・・家でも歌ってやろうか?」
「え、えーと・・・。今きけたのでいいです」
「・・・・・そうか」
「有紀殿が知っている子守唄はどんなのじゃ?」
「え、うーん・・・?『ねーんねーん、ころーりよ』って言う奴です」
「妾は知らんの。歌ってみろ」
「(微妙に眠れなさそうな歌だけどいいのかなぁ・・・?)」




**


途中までうっかり題名間違えてました(汗)
薔薇姫様の口調がいまいちわからないので、微妙です・・!
これで、邵可様とのつながりができました!秀麗と静蘭も。
あとは、絳攸なのにうまく進みませんー・・・。

後日加筆修正してサイトにアップ予定

拍手[0回]

彩雲国 原作沿い

久しぶりに家に帰ると何故か玄関で不機嫌そうな空気を纏った方がいらっしゃった。

旅帰りの為に少し汚れているのを気にしながら有紀は駆け足になった。

「鳳珠様!」

目前に立って見上げると少し微笑まれた気がした。

「ただいま戻りました」
「無事で何よりだ」

鳳珠自ら扉を開けてくれたので嬉しい気持ちを抑えきれずに有紀は笑みを浮かべた。
いつもならば微笑み返してくれるはずの鳳珠は何故か苦々しい空気を再度纏い始めてしまった。

なにがあったのだろうと見上げると彼は「着替えが済んだら部屋に来なさい」とだけ言うと家人を呼んで部屋に行ってしまった。

よくわからないものの家人に言われるままに湯浴みを済ませ、何故か一等品の服を着せられ客室へと連れて行かれた。


そして部屋には何故か霄太師がいた。




「女官に、ですか……?」
聞き返すと霄太師は「うむ」と頷いた。同席している鳳珠は仮面を外しているが、そのおかげで5、6年前に見たことがあるような渋面が惜し気もなくさらされていた。少し、恐い。
直視すれば有紀にはやましいことは何もないのに平伏してしまいそうである。
鳳珠から無理矢理視線を霄太師に戻すと、有紀の真っ正面に好々爺たる顔を張り付けた霄太師がいた。

嫌な予感を振り払うと有紀は「ご冗談を」と言わんばかりの笑みを浮かべる。

「ですが、女官を選ぶ基準は『容姿』も含まれていると聞きます。とてもではございませんが私などは」

美形に囲まれて暮らしていようと本人は十人並みであるということを十二分に理解しているのだが。その発言で視界の端の鳳珠が眉根を寄せようと今は構わなかった。
けれど霄太師は一瞬、ニヤリと笑った。
目の錯覚かと思ったがまたすぐに好々爺に戻っていた。

「有紀殿。知っておられるかな?」
「何を、でございましょうか」

第六感が警報を鳴らす。霄太師にこれ以上話させてはいけないと。

「6年程前に紅黎深殿の養い子の李絳攸殿が史上最年少の16歳で状元及第されたのは」
「存じております」

鳳珠が少し身動きした気がした。できれば有紀は鳳珠と共にこの場から逃げたかった。

「実はその年に同じく16で及第したものがおったのですが、わずか数年で朝廷を去りましてのう」
「それはもったいない事をなさる方がいらっしゃるんです」

イヤな予感は的中していた。冷汗が背中を伝う。
鳳珠はもう呆れ顔を浮かべていた。呆れられているのは有紀ではない。……と思いたい。

正面の霄太師は笑みを浮かべていた。勝利確信した勝者の笑みを。

「最終的には紅秀麗殿にもお頼みするものでの、手助けをお願いしたい」

『紅秀麗』

それは有紀にとって最終兵器になりうる少女であった。
妹のように可愛がっている紅黎深の姪であり、紅邵可の娘。


有紀は白旗を上げるしかなかった。




**



「ひどいんです! 人の弱みに付け込んで……っ」

朝廷の隅にあり、忘れられた場所としてある意味有名な府庫にその場に似つかわしい女人の声が響いていた。

「すみません、弟がご迷惑をおかけしまして」
「いえっ! 邵可様も黎深様も何も悪くありません! 最終的には私が自分で選んだんですから!」

慰めるように有紀にお茶を出した人間は申し訳なさそうな顔をしていた。中年でけれど温和な性格が滲み出ている男の名は紅邵可。紅黎深の実兄であった。

後宮の試験に容姿はさておき実力で通った有紀は筆頭女官である珠翠の協力を得て府庫に癒しを求めてきていた。

邵可の苦い「父茶」を静かに飲み干すと有紀は苦みを感じさせない顔で横に置いておいたお茶受けを差し出した。

「あの狸爺に気を緩めてはいけませんよ?」
「狸爺……確かにそうですね! 邵可様、作ったばかりなのですが召し上がっていただけませんか? その……お茶の御礼に」

後宮に入る直前に家で作ってきたドーナッツである。何気に邵可一家に人気がある。
笑みが広がり邵可が御礼を言おうとした瞬間彼は入口の方を見ると微笑みを浮かべた。

邵可の視線につられて有紀もそちらを見ると懐かしい顔がいた。


光り輝く銀細工のような美しい髪に、整った顔立ち。
位が高いのを表す佩玉を身につけた人物は府庫の入口で立ち止まり目を見開いていた。

「……有紀、か?」

その声で我にかえった有紀は椅子から立ち上がると正式な礼を取った。

「よせ。お前にそうされるのは腹が立つ。立て」

相変わらずな彼に有紀は苦笑すると静かに立ち上がった。


「そうもいかないのですよ吏部侍朗」
「……」

「絳攸、立ち止まっていないで進んでくれないかい?」

立ち尽くす絳攸の後ろから飄々とした声が聞こえた。そしてひょっこり絳攸の肩越しに顔を覗かせる。その声の主に有紀はギョットしつつもすかさず略礼をとった。

「ん? こんなところに女官が? しかも新顔のようだね」
「……だから顔をあげろと」
「おやおや絳攸、女性にはもっと優しくしなくちゃ駄目じゃないか」

面を上げる事を許された為に有紀は嫌々ながら顔を上げた。

吏部侍朗、李絳攸の後ろにいたのは藍色の服を見に纏った文官風情の男。

「私は藍楸瑛と申す者。貴女のお名前を伺っても?」
「……有紀、と申します」


この場をどう収集つけようかと考えを巡らす有紀と絳攸を助けるように邵可が皆で茶をする事を提案した。



「で、何故有紀がここに。しかも女官としているんだ?」

楸瑛がにこにこと笑みを浮かべながら目を合わせてくるのを必死で振りほどきながら有紀は「答えられない」と目で訴えた。


「こいつ(楸瑛)はいないものと思え。そうしたらこの場にいるのは邵可様だけになる。誰もお前を不敬等といわん」
「酷いな、絳攸」
「黙れ常春頭!」

相変わらずなやり取りを眺めながら有紀は白状することにした。


「霄太師に請われて今日からよ」
「その話はいつから来たんだ?」
「3日前」

あまりの日付に誰もが沈黙した。

「…帰って来たのはいつだ?」
「その日よ」

はあ、とため息をついてお茶を飲むとほのかな甘みが広がった。後宮から勝手に持ってきた茶葉は流石に高いだけあり美味しい。

「俺は何も聞いていないぞ?!」
「面白がっていらっしゃるだけじゃないかしら?」

有り得る。というかその点では話題の人は前科持ちである。

「で、有紀殿と絳攸はどのようなご関係で?」

思わず有紀は絳攸と顔を見合わせた。
関係。一言で言い表せる言葉がちょうど当て嵌まった。

「友人だが? ところでこれは有紀が作ってきたのか?」
「ええ、どうぞ。藍将軍もどうぞ召し上がってください」

懐かしそうに手に取る絳攸を見て、有紀は楸瑛を見た。やはり見たことがないのか彼は不思議そうな目をしていた。
そして少し離れた位置に座っている邵可を見た。
彼は微笑んでいた。まるで「大丈夫」と言っているような笑みで。
そのことにほっとして有紀も自作菓子を頬張った。

**

始まりの風に絡めるには女官で放り込んだ方が早いですよね~

拍手[1回]

ブログ内検索

注意書き

【TOS・TOA・彩雲国物語・遙か・十二国記など】の名前変換小説の小ネタを載せております。
各小話のツッコミ大歓迎です!
気軽にコメントしてください。

カテゴリー

最新記事

設定

各タイトルの説明

【schiettamente】又は【軍人主】
 └TOAマルクト軍人主人公
 デフォルト名:ラシュディ・フォルツォーネ

【教団主】
 └TOAローレライ教団主人公
 デフォルト名:アディシェス・アスタロト

【アゲハ蝶】
 └TOA雪国幼馴染主人公
 デフォルト名:エミリア・ティルノーム

【ensemble】又は【旅主】
 └TOS旅仲間主人公
 デフォルト名:アトラス・ファンターシュ

【一万企画】又は【企画主】
 └TOSロイド姉主人公
 デフォルト名:セフィア・アービング

【傍系主】
 └TOA傍系王室主人公
 デフォルト名:ルニア・ディ・ジュライル

【十二国記】
 └雁州国王師右将軍
 デフォルト名:栴香寧

【遙かなる時空の中で3】
 └望美と幼馴染。not神子
 デフォルト名:天河華織

【明烏】
 └遙かなる時空の中で3・景時夢
 デフォルト名:篠崎曙

【彩雲国物語】
 └トリップ主
 デフォルト名:黄(瑠川)有紀

【コーセルテルの竜術士】
 └術資格を持つ元・旅人
 デフォルト名:セフィリア・エルバート
 愛称:セフィ

【まるマ・グウェン】
 └魔族
 デフォルト名:セレスティア・テリアーヌス
 愛称:セレス

【まるマ・ギュンター】
 └ハーフ、ヨザックの幼馴染
 デフォルト名:シャルロッテ・ティンダーリア
 愛称:シャール

【逆転裁判】
 └成歩堂・御剣・矢張の幼馴染で刑事
 デフォルト名:筒深稔莉(つつみ みのり)

アーカイブ

リンク

管理画面
新規投稿

お題配布サイト様


Natural Beautiful
└「何気なく100のお題」
A La Carte
└「ふしぎな言葉でいくつかのお題」
追憶の苑
└「詩的20のお題」
└「始まりの35のお題」
リライト
└「気になる言葉で七の小噺」
└「君と過ごす一年で十二題」
Ewig wiederkehren
└「恋に関する5のお題」
Dream of Butterfly
└「失われる10のお題」